巻ノ八十七 佐々木小次郎その三
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「安心出来ます」
「小次郎殿もおわかりですか」
「はい、ですから」
「安心してですな」
「お二人を送れます」
そうだというのだ。
「ただ、相手に怪我なぞささぬ様に」
「幾ら暴れていても」
「貴殿達の相手ではないので」
「戦の場でもないので」
「だからですな」
「手荒なことはしませぬ」
刀や薙刀、金棒まで持ち出しての大喧嘩であるがだ。
「ではこれより止めて参ります」
「さすれば」
佐々木とも話をしてだ、そしてだった。
幸村と根津は木刀をそれぞれ一本だけ持ってだ。そのうえでだった。喧嘩をしているならず者達のところに来て声をかけた。
「御主達止めるのだ」
「?何だ一体」
「一体何だってんだ?」
「喧嘩なぞするものではない、そうしたことは道場で作法を守ってするものだ」
腕を振るうことはとだ、幸村は根津を従えたうえでならず者達に言った。
「ましてや周りに人がいる中で光るものなぞ出すものではない」
「そんなこと聞けるか」
「わし等にも意地があるわ」
「ここで決着をつけてくれるわ」
「今日こそはな」
「だから邪魔をするな」
「邪魔をすると御主達から倒すぞ」
「話は後で聞くがそこまでいきり立っているなら仕方がない」
幸村も言う。
「ならばじゃ」
「はい、殿」
根津が幸村に応えた。
「やはりこうなりましたな」
「そうじゃな、ではじゃ」
「これよりですな」
「少し大人しくしてもらおう」
「そうしましょう」
「何言ってんだ、こいつ等」
ならず者達は幸村のその言葉を聞いてだ、二人を囲んでそれぞれ言った。
「この数をどうして止めるんだ」
「喧嘩の前に手前等を叩きのめしてやる」
「邪魔をするなら容赦しないって言ったな」
「ならそうしてやる」
「覚悟しやがれ」
こうそれぞれ言って二人に挑みかかってきた、刀や金棒を手に。だが。
二人は音もなく動いてだ、風の様に流れる動きでだった。
二十人以上いるならず者達の手や脛、みぞおち等を木刀で打ってだ、そうしていき瞬く間にだった。
全てのならず者達をのしてしまった、そして痛みで蹲る彼等に言った。
「さて、では話を聞こうな」
「なっ、まさか」
「二十人以上いたというのに」
「そのならず者達を僅か二人で」
「瞬きする間に全て倒すとは」
見た者は皆唖然としていた、だが宮本と佐々木だけは言った。
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