巻ノ八十七 佐々木小次郎その二
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ふとだ、佐々木はその目を鋭くさせて辺りを見回して言った。
「そうしたかったのですが」
「これは」
根津も言う、宮本と幸村も気配を察して表情を変えていた。それで幸村はそこにいた自身を含めた四人に言った。
「外に出ましょう」
「それがいいですな」
「外で何かありました」
「これはすぐに出て」
「まずは何事かを確かめ」
そしてというのだ。
「我等に出来ることなら」
「はい、すぐにですな」
根津が幸村に応えて述べた。
「その出来ることをしましょう」
「その通りじゃ、では行こうぞ」
こう言ってだ、幸村は三人を連れて道場の外に出た。すると後から主も道場にいる他の者達も出て来た。そして外を見ると。
ならず者達が暴れていた、幸村はその彼等を見て言った。
「ふむ、これは」
「殿、いけませんな」
根津が幸村に剣呑な顔で言ってきた。
「やはり」
「うむ、これはな」
「すぐにですな」
「何とか収めよう、刀を抜いておる者も多い」
幸村も根津に応えて言う。
「だからな」
「はい、今より」
「ここは我等二人で収めます」
幸村は宮本と佐々木だけでなく主や他の道場の者達にも言った。
「ですから」
「お二人で、ですか」
「はい」
幸村は自分の言葉に驚く道場主に答えた。
「そうさせて頂きます」
「二十人以上が暴れていますが」
「いえ、それ位ならです」
「お二人で、ですか」
「行かせて頂きます、そうですな」
幸村はさらに言った。
「それぞれの木刀の一本でもあれば」
「足りますか」
「左様です」
「まことにそれで宜しいのですか」
「お任せ下さい」
幸村の返事は変わらない、そしてだった。
あくまで真剣を持たせようとする主や道場の者達を止めてだ、木刀を受け取った。それは根津もであり。
根津にだ、こう言ったのだった。
「行くぞ」
「はい、それでは」
根津も余裕のある顔で応えた。
「そうしていきましょう」
「ではな」
「ふむ、確かに」
宮本は平然と笑みさえ浮かべて言った。
「お二方ならです」
「大丈夫だとですな」
「はい、絶対に」
「お二方なら」
佐々木も言う、言いつつ妙に宮本と張り合っている感じが出ている。
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