第79話 幻想月読
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ーセン行こうぜ」
社会で何が起きているなんて知る必要もなければ興味も湧かない。
如何に簡単に皆から羨望の眼差しが得られるかを考えている。
「ちょっと良いからカンパしてくれよ」
「い、いえ......そんなにお金ない」
「あ?テメェ調子に乗ってんじゃねーぞ!」
「ひぃぃ!出します出します」
「5000円か。ったく、さっさと出せば良いんだよ!」
それは暴力や恐喝による自己顕示もあれば......
「授業終わり〜。ブチャイクな顔で死にたいわー」
自撮りをしながらアヒル口で写真を撮ってインターネットに手軽にアップする事で得られる自己顕示もある。
それが日常だと誰もが信じて疑わない。
怖いのは自分に存在価値がない事を自覚する事だけ......
だって日常が壊れるなんて想像出来ないからだ。
だが崩壊は前以て教えてくれる事は微塵も無く突如として街灯から店先の照明、携帯電話が全て圏外になりだす。
「!?」
「な、なんだよ?」
「ちょっとメール中だったんだけど最悪!」
勿論信号機も反応しない交差点で人々は右往左往しながら電波の復旧を自分の思い付く限りの努力をしていると待ち合わせのシンボルになりつつある大きなモニターに映像が表示される。
黒い背広に黒いネクタイ姿の男性が原稿を片手に今起きている混乱の説明を始める。
『ここで臨時学園都市ニュースです
発電所の事故により電力の供給が止まり大停電となりました』
停電という情報が得られただけでも何も知らずに落ち着かない心は幾分か軽くなる。
「停電だってよ」
「ついてねぇな」
「復旧はどのくらいかな」
「つーか事故るかよフツー」
安心すると不平不満が噴出し始めるのも人間の特徴だ。
モニターに表示されたニュースは文句など知らずに淡々と文章を読み上げる。
『事故調査委員会では生物実験による影響によるものと考え、さらなる実験を進めよとの判断に......』
言い回しが少しおかしい気がしたが、もっとおかしい点に気付いてしまった女子高生が隣に居る友人の肩を掴んだ。言うのでさえ怖い。
「ねぇ、待って......」
「どうしたの京子?」
「今って停電してるんだよね?」
「そうよ。ほらニュースでやってるし」
「じゃあ、何でアレは映っているの?」
「!?」
『なお復旧のメドは......未来永劫ないものとする。モニター前の実験動物の君達は存分に泣き叫んでください』
原稿を乱雑に置くと背広を着た男性から凡そ人間味の外れた牙をギザギザと耳まで伸ばした笑みが浮かぶと映像が乱れて凄まじい程に捻じ曲がった幾何学模様が動き出して、不協和音が大音量で流れだした。
「な、何だ!?」
「ぜん!ぜんき......えない」
「なん......あた....
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