第七話 プラウダ戦を見ます! その2
[4/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
突然後ろから声が聞こえ二人が振り向くと、一人の女性がにこやかな笑顔で立っていた。
右目には黒い眼帯を付けており左目だけで二人を見ていた。
腰まで伸ばした黒髪が風に揺られているのを見て、まほは綺麗な人だと思った。
しほは違った。
しほの表情はみるみる内に変わり、こわばり少し顔色が悪くなり、まるで何かを恐れているような表情となっていた。
戦車道の名門にして日本最古、最大の流派……西住流。
その師範であるしほのことを『ちゃん』付けで呼ぶ人間などこの世に一人しかいない。
「なぜ……あなたがここにいるのですか…?」
しほが眼帯を付けた女性に問うと女性は答えた。
「めんこくて仕方がない自分の娘の晴れ舞台なんだから、見に来るのは当然でしょ?しほちゃんだってそうでしょ?自慢のかわいい娘が試合に出てるんだから」
「あの子は、もう西住流ではないわ!」
「それでもしほちゃんの子でしょ?死ぬまで西住の名を背負っていくんだから」
にこやかな笑顔のまま、答える女性にしほは恐怖を感じていた。
それと同時に昔の記憶がよみがえった。
この人はいつもそうだ。いつも笑っている。どんなことが起きても、戦車に乗っているときも……いつもその目で私を見る。
あの時も……
「お母さま?大丈夫ですか?」
「……ええ……大丈夫よ。まほ」
昔の事を思い出していたしほは、まほに声をかけてもらうまで気が付かず、本人にとっては忌々し記憶を思い出していた。しほは、女性を睨み付けるような目つきになりながら向き直り言った。
「相変わらずお元気そうで……”栗林流”師範……栗林千秋殿!」
「殿なんてつけないで昔みたいに『千秋さん』って呼んでよ〜というか毎年あってるじゃん……あっ!わかった!娘が見てるからできるだけカッコよくしようとしてるでしょ!やっぱりしほちゃんは変わんないね〜!」
「違いますよ………」
さっきまでのシリアスな空気が消え、しほはいつものように呆れていた。
大体、しほと千秋が出会うとこのようなやり取りが行われる。しほがいくら突き放そうとも、敵意を見せても、千秋は笑いながら近づいてくる。
苦手ではあるが嫌いではない、それが千秋に対するしほの思いだった。
「この子が長女のまほちゃん?大きくなったね〜!覚えてる?何回か会ってるんだよ〜。昔のしほちゃんみたいで可愛いね〜!好きな食べ物は?好きな戦車は?趣味は!?」
「……千秋さん、まほが困っているのでやめてください」
「えっ……何?」
まほに抱き着いて頭を撫でまわしている千秋にしほは言ったが、相変わらずの笑顔で聞き返してきた姿を見て、しほは思った。
昔から何も変わってない
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ