1期/ケイ編
K18 Moon Drop
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「どこかの場所、いつかの時代。蘇るたびに、わたしの代わりにみんなに伝えてください。世界を一つにするのに力なんて必要ないってこと。言葉を越えてわたしたちは一つになれるってこと。わたしたちは未来にきっと手を繋げられるということ。わたしには伝えられないから。了子さんにしか、できないから」
「お前、まさか――」
ここまで聞いて察せないほどケイは馬鹿ではない。
立花響は、落下する月の欠片に挑む気でいる――――命と引き換えに。
「ほんとにもう――放っておけない子なんだから」
とても穏やかな呆れ方は、ケイがよく知る櫻井了子のものだ。
そうだった。どちらが本物で偽者という次元ではない。了子はフィーネだが、フィーネとて「櫻井了子」だった。
翼が口を堅く引き結び、クリスは憚りなく涙を流している。そんな少女たちの、頭に、ケイは無言でそっと両手を置いた。
「胸の歌を、信じなさい」
それを遺言に。
痛みだけを信じた孤高の巫女は、砂と化して、優しい風に吹かれて――逝った。
藤尭が小型の装置で、月の欠片の落下軌道を計算した。計算結果は――
「直撃は、避けられません――」
まあ、そうだろうな。――ケイの胸に浮かんだ感慨はその程度。感慨、いや、諦念と表現すべきか。
誰もが落ちる月の欠片を見上げる中、響が一人、進み出た。
「響……」
「何とかする。ちょーっと行ってくるから。生きるのを、諦めないで」
そして、響がそう申し出て空へ飛び立った時も、ケイは小さな悔しさと深い諦念を抱くしかなかった。
翼とクリスが顔を見合わせている。彼女たちも、また、やはり。
「小日向」
翼がケイをふり返った。呼びかけだけでも伝わった。問われている。征くか、征かないか。
「俺のギア、空は飛べないみたいなんだ。――だから、すまん」
「ならば仕方ない。私と雪音で行こう」
翼はクリスを見やる。クリスは苦笑して肯いた。
「つーわけだから、あたしらが帰るまで、あの子とそっちのことは頼んだぞ」
クリスに胸を軽く小突かれた。
ふり返れば、まだ涙を流している未来がいる。未来の友達がいる。弦十郎も藤尭も友里も緒川もいる。
「分かった。バシッと引き受けさせてもらう」
だから必ず帰って来い――と、繋げることはできなかった。
――空に絶唱。歌に極光。
3人の少女をむざむざ送り出したケイの、背中に、どんっ、と誰かがぶつかるように縋りついた。
「未来……」
未来が、ケイの背中に縋って、泣いている。
どんな慰めも、かけることができない。
胸が張り裂けそうな想いで、ただケイは戦姫た
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