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Sword Art Rider-Awakening Clock Up
ネザーVSユージーン
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は空っぽになっていた。

「時間稼ぎのつもりかぁ!!」

厚い煙の中央からユージーンの叫びが響き渡った。次いで、スペルの詠唱が耳に届く。

すぱっ!と赤い光の帯が反射板に(ほとばし)り、黒煙を切り裂いた。無効化(ディスペル)された煙がたちまち薄れ、世界は光を取り戻す。

リーファは慌てて青空に視線を走らせた。しかし__

いない。

空にホバリングするのはサラマンダーの将軍ただ1人で、小柄なインプはどれほど探そうとも見つからない。

「まさか、あいつ、逃げ……」

背後で、ケットシーの1人が呆然と呟いた。その言葉が終わらない内に、キリトは強く叫んでいた。

「そんなはずない!!」

絶対に、それだけはない。彼以外のどんなプレイヤーも逃げ出すであろうこの状況でも、彼だけは逃げない。

なぜなら、あのネザーには確信を持っていたのだから。彼は《生きて》いる。この世界をもう1つの現実と定め、ここで(はぐく)まれたあらゆる人の感情、信頼や絆を信じている。

だからこそ__、聞こえる。

高らかな笛の音にも似た、美しく力強い飛翔音。近づいてくる。どんどん、どんどん大くなる。

「………!!」

ついにその姿を見出した瞬間、キリトの両眼から熱い眼差しが向けられる。

太陽の中だ。アルヴヘイムに於いてもっとも強いライトエフェクトを生み出すオブジェクト。中天から降り注ぐ白光を貫いて、小さな影が一直線に急降下してくる。

キリトに数瞬(すうしゅん)遅れて気づいたユージーンが、さっと真上を振り仰いだ。しかし強烈なエフェクトに顔を顰め、左手を顔の前に翳した。並のプレイヤーなら、ここで太陽光線を避けるため水平移動しようとし、そこを上から叩き落とされただろう。

しかし、さすがと言うべきか。ユージーンの剛毅な口元がギリッと引き締められ、次いで大きく開かれた。

「ドアアアァァァッ!」

天地を揺るがす気合いと共に、太陽に向かってサラマンダーの真骨頂である重突進をかける。真紅の光を垂直に引きながら、ロケットのように急降下していく。

その真上から突進してくるネザーは、これまで常に両手で握っていた黒い巨剣を、なぜか右手一本で構えていた。左手は大きく後ろに引かれてよく見えない。

強烈な光の中、その左側が閃き、高々と掲げられた。

そこに握られた銀色の輝きの正体を、キリトやリーファが見間違うはずもなかった。あれは、先刻ネザーが鞘から抜いていったリーファの長刀だ。つまりネザーは今、左右の手に剣を一振りずつ装備している。

二刀流__、その光景を眼に焼き付けたキリトは、《二刀流はお前だけの専売特許ではない》と自分に宛てたネザーからのメッセージを受け取った。だが実際、両手に握った2本の剣を高度に連携
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