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Sword Art Rider-Awakening Clock Up
橋上の決着
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爆裂魔法を1つ中和するたびに残りのマナポイントがぐんぐんと減少していく。片手剣を鞘に戻し、空いた左手でポーチからマナ回復ポーションを取り出して飲んだが、とても追いつかない。この爆撃1回を防いだところで何になる__と思った、その時。

キリトの胸ポケットから顔を出したユイが鋭い声で叫んだ。

「パパ、今です!!」

ハッとして眼を凝らす。紅蓮の炎の中、キリトが剣を掲げすっくと直立していた。微かに呪文の詠唱が耳に届いてくる。スペルワードの断片を、記憶のインデックスと照合する。

……このスペル……幻属性か!?

ネザーは一瞬息を飲み__そして歯噛みした。今キリトが詠唱しているのは、プレイヤーの見た目をモンスターに変えるという幻影魔法だ。だが、実戦での評価はないに等しい。なぜなら、変化する姿はプレイヤーの攻撃スキル値によってランダムに決定されるのだが、大抵はパッとしない雑魚モンスターになってしまう上、実ステータスの変動がないということが周知されてしまっては恐れる者などいるはずもないからだ。

ネザーのMPはついに残りの1割を切った。キリトの作戦とやらに従って一か八かの博打(ばくち)に賭けたものの、どうやらダイスは裏目に出たようだった。

しかし__。

無駄骨……とは思いたくないな。

ネザーは作戦の欠点を払い除けるようにぶんぶんと首を左右に振る。キリトとはSAO時代からの長い付き合いな故、ネザーも自分なりにキリトを信じていた。仕事柄、人の欠点ばかりを見ようとするネザーにも心から信頼を寄せられる者はいる。キリトもその1人と訊かれたら__素直にYESとは答えられないだろう。

少なくとも賭けてみるだけの価値はあると見越している。

そう思いながらも右手に最後の力を込めた。敵の火球攻撃の最終波が降り注ぐのと、防護フィールドが消えるのはほぼ同時だった。一際大きく火炎の渦が巻き起こり、ゆっくりと静まって__

「え……!?」

「………!?」

炎の壁の中で、ゆらりと黒い影が動いた。一瞬、眼の錯覚かと思った。それが、あまりに巨大だったからだ。

大男揃いのサラマンダー前衛の、優に2倍の高さがある。視線を凝らすと、背を(かが)めた巨人のように見えた。

「キリト君……なの……?」

リーファは呆然と呟く。そうとしか考えられない。あれは、キリトが幻影呪文によって変化した姿なのだろうが__あの大きさは。

立ち尽くすリーファとネザーの眼前で、のっそりと黒い影が頭を上げた。巨人ではなかった。その頭部はヤギのように長く伸び、後頭部から湾曲した太い角が伸びている。丸い眼は真紅に輝き、牙の覗く口からは炎の息が漏れている。

漆黒の肌に包まれた上半身にはゴツゴツと筋肉が盛り上がり、逞しい腕は地につくほどの長さだ
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