40部分:第四話 白い羽根の男その九
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るのか」
「そんな義理はないと思うが」
武蔵はそれは口では否定してみせた。
「一介の傭兵である俺が夜叉の御前に対してな。違うか」
「・・・・・・くっ」
「わかったら撤退するのだ」
武蔵はまた壬生に告げる。
「いいな」
「・・・・・・わかった」
壬生も遂に武蔵のその言葉に頷くのだった。こうまで言われては仕方がなかった。
「小次郎、この勝負預けておく」
「おい、待ちやがれ!」
「いや、待て小次郎」
「武蔵、いやがるのか!」
小次郎は立ち上がって周囲を見回す。そのうえで姿が見えない武蔵に対して問う。
「いるんだったら姿を現わせ!俺と勝負しろ!」
「今はその時ではない。御前も怪我をしているな」
「それがどうした!」
「この飛鳥武蔵傷を負っている者、武器を持たぬ者には剣を向けぬ」
「ふざけるな、俺にとっちゃこんなものは何でもねえんだよ!」
しかし小次郎はそれでも言う。相変わらずの調子だった。
「わかったら出て来い!今度こそ御前の飛龍覇皇剣を打ち破ってやるからよ!」
「それはまた今度だ。ではな」
「くっ、待ちやがれ!・・・・・・つっ」
ここでまた左脚が痛む。その痛みに倒れるその間に武蔵の気配が消え去った。壬生ももう撤退していた。彼等と入れ替わる形で今度は麗羅が小次郎のところにやって来た。
「小次郎君、やっぱりこんなところに」
「麗羅かよ。御前出陣したんじゃなかったのかよ」
「だから今ここにいるんだよ」
小次郎を助け起こしながら答える。そのうえでまた彼に声をかける。
「歩ける?大丈夫」
「大丈夫に決まってるだろ」
小次郎は助け起こされながらその麗羅に応える。
「ちっ、余計なことしやがって」
「余計なこと?」
「そうだよ。このままでも俺は武蔵の野郎を追えるんだよ」
こう麗羅に言う。
「それをよ。・・・・・・全く」
「・・・・・・小次郎君」
今の言葉を聞いた麗羅の声の調子が変わった。急に険しいものになる。
「いい加減にしなよ」
「何だよ、一体」
「皆どうして小次郎君にあれこれ言うのかわかっているのかい?」
「だからどうしたってんだよ」
「竜魔さんも項羽さんも本気で小次郎君を心配しているんだよ」
「兄ちゃん達がかよ。まさか」
小次郎には実感のないことだった。言われても眉を顰めさせるばかりだ。
「そんなわけが」
「わからないのならわからないままでいいよ」
麗羅は一旦はこう言って突き放した。
「けれどそれでも。皆小次郎君を心配して。僕だって」
「麗羅・・・・・・」
「一人で歩けるんだったよね」
「ああ、それはな」
一応は、といった調子で麗羅に答える。
「屋敷は帰れるさ。悪いな」
「いいよ、これは」
「それで麗羅、御前はこれからどうするんだ?」
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