プロローグ
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まだ全然序盤じゃん。てことは、聖者の剣もまだゲットしてない?」
「うん。なんだよ、その聖者の剣って」
「やっぱ知らないか。森でゲットできんだよ。あれケッコー攻撃力高いからさ、ゲットするとあとの攻略が楽だぜ。たしか、赤い宝箱だったっけ……」
コウイチが自分が貸したゲームの解説をしだした。
「……それで、城の大臣が敵に操られてて、ゾンビみたいに襲い掛かって来るんだ!俺そん時セーブし忘れててさー、マジ焦ったよ」
「ちょっと、それネタバレじゃないか。あんまり言うなよ、今やってるんだから……」
「だから、聖者の剣がなきゃ話にならないんだって。ジョゲンだよ、ジョゲン」
調子のいいことをコウイチが言った。こいつはこういうやつだ。この間コウイチが宿題を忘れて来た時も、今回だけ!と宿題を写させてほしいと頼んできたのが、確か3回目であった。
「とりま、森入ったらキノコのあるほうな!覚えとけよ!」
「忘れないよ。闇落ちした大臣が気になるから」
「なんだよ、大臣のほうかよ!」
「それより、ケイはまだ来てないの?」
佑真は話題を変えるように言った。
「あ、あいつ今日はくるって言ってたぜ。3か月も学校さぼってゲームのシナリオ考えていたんだから、すげえよな。普通じゃないぜ」
コウイチが感心してるのかあきれてるのかよくわからない風に言った。
「今日来るってことは、ついにゲームのシナリオが完成したってことかな」
「ああ、昨日のラインで言ってたよ。なあ佑真。あいつの考えたシナリオってどんなんだと思う?」
「とりあえず、王道、ではなさそうだなぁ。……悪人が主人公のダークヒーロー系とか?」
「ダーク系かぁ。でも、おれは意外と、女子がたくさん出てくるハーレムものだと思うね。あいつ、意外とスケベなところがあるから」
「それだけはないよ」
とそのときコウイチの後ろから人が来た。長身色黒の男子で、肩から白いスポーツバッグを下げている。ぐいぐい、とバッグでコウイチの背中を押し「コウイチどけ、じゃま!」と言った。コウイチが振り向く。
「おっす北村!おはよう!」
コウイチが満面の笑みで言った。立ち上がる気配はない。
北村はサッカー部でいつも朝練が終わってからクラスに来る。部活しているから肌が黒いのは日焼けで、見ていて健康的だと色白の佑真は思う。
「うっせ、じゃま。いいから早くどけコーイチ」
「なんだよーおはようくらいいいだろ」
「うるせー」
こういったやりとりも、朝の風景の一部だ。
佑真は「おはよう北村」と声をかけた。
「おう、おっす!」
「なんだよ、俺は無視かよ!」
「はは」
コウイチの声にかぶせるように、教室の扉をガラガラ開ける音がした。
「おはよう、ほら席につけ〜。静かにして〜
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