第7章 聖戦
第166話 ゲルマニア、ロマリアの現状
[2/11]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
そう、元々巨大なシャンデリアが設置されていた室内や回廊なら、そのシャンデリアを蛍光灯に変えるだけで事が足りたのですが、そう言う照明設備を始めから設置する予定のなかった個所へと蛍光灯を設置した際に、実はあまり細かな事を考えて居なかった為に……。
「折角、豪華な調度品や有名な画家による天井画。それに、柱に施された精緻な彫刻なんかが、蛍光灯の所為で妙に安っぽく見えるのがどうにもなぁ」
矢張り建物やその他の風格に相応しい照明の使い方がある。そう言う事なのかな。
再びの溜め息混じりの呟き。もっとも、これは明らかに自分自身の能力を超えた所で引っ掛かっているのは間違いない。何と言うか、こう陰影の使い方にもう少し工夫が必要だったのではないか。言葉には出来ないけど、何かが足りないんじゃないか。そう言う焦りにも似た感覚。
ただ……。
ただ、こう言うのは多分、芸術的な感性の問題なので、そう言う部分に於いては所詮一般人の俺では限界があるのだが……。
確かに、中世ヨーロッパに等しいハルケギニアの人々に取って、魔法を使用するよりも明るい蛍光灯の明かりと言うのは珍しく、不思議な物と感じるでしょう。
最初の内は。
しかし、これが当たり前と感じるように成った時、この妙に安っぽく見える照明器具では結果、ガリアの王家の威信と言うヤツを損なう恐れがある。
「流石に俺が其処まで考えなくちゃならない謂れはないけど、それでも一応これは俺が最初に手を掛けた仕事やから」
所謂アフターケアのようなモンかな。
普段通りの無駄話。但し、俺の言葉の中には未来……この聖戦が終わった後の、平和な世界に成ってからの内容を意図的に織り交ぜている。
俺は地球世界の歴史を知っているだけで、政治や経済。もしくは軍略に通じている訳でもない、ごく普通……とは言い難いけど、それでも二十一世紀の日本に暮らして居た男子高校生。おそらく、この聖戦が終われば……その時、俺が望むのなら御役御免となる公算が大きい。
その後は、やり残した仕事を終わらせ――
「お待たせしました」
――しばらくは本当に晴耕雨読のような生活を続けるのも悪くはない。
未来の事。未だ聖戦を無事に生きて切り抜けられる目論みさえ立っていない状態で考えるには……何と言うか、鬼に笑われるような事を考えて居た俺。その俺に対して話し掛けて来る男声。
その時、一瞬、腕の中の少女から居心地の悪そうな気配が発せられたが、それでもそれは一瞬の事。俺の方が泰然自若とした雰囲気のままであったので、彼女の方からは何のアクションも起こす事はなかった。
「別に待たせされた、と感じるほど待たされた訳ではないけどな」
妙に明るすぎる蛍光灯の下に佇む貴公子。実力に裏打ちされた静かな自信と言う雰囲気を
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ