巻ノ八十六 剣豪その九
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「まさに」
「実はそれがしも」
「同じですか」
「それがしは最初から浪人ですが」
何処かの藩にいた訳ではないというのだ。
「しかしです」
「浪人であるからこそ」
「はい、ですから」
「同じというのですな」
「左様です」
まさにというのだ。
「ですからこのままです」
「泰平となれば」
「やはり困りますな」
「左様ですか」
「戦があれば」
宮本はその目を強くさせて言った。
「その時は」
「すぐにでも」
「どちらかに馳せ参じて」
「戦われますか」
「そうします」
「そうお考えですか」
「貴殿は違いますか」
宮本は幸村に問い返した。
「それは」
「宮本殿と同じかと」
幸村はこう答えた。
「それは」
「やはりそうですか」
「はい、ですが」
「問題はですか」
「誰につくかといいますと」
「それは違いまするか」
「つく方、いえ仕える方は決まっております」
これが幸村の返事だった。
「既に」
「左様ですか」
「はい、その時は」
「志がおありですか」
「それ程大層なものかはわかりませぬが」
それでもというのだ。
「それがしはもうj決めております」
「そうなのですな」
「はい、あくまでその時が来ればです」
「戦になれば」
「そうします」
決めた相手に仕えてというのだ。
「それがしも戦います」
「そうされますか、では」
「はい、その時は」
「味方同士であればいいですな」
宮本は笑みを浮かべ幸村に言った。
「それがしそう思いました」
「敵に別れるのではなく」
「お二人共強いですからな」
実際に手合わせをしてみて、そして根津に技を授けたからこそわかることだ。だから宮本も言ったのだ。
「ですから」
「そう言われますか」
「非常に、ではその時は」
「はい、敵同士にならぬ様に」
「そのことを祈ります」
「さすれば」
「はい」
こうした話をだ、宮本はしつつだった。根津に彼の技をさらに教えていった。それは長く続いていたがある日のことだ。
道場にまた客が来た、宮本はその時も道場において根津と稽古をしていたが主からその話を聞いて問うた。
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