暁 〜小説投稿サイト〜
歌集「春雪花」
317

[8]前話 [2]次話



 夢ぞ見る

  春のまぼろし

   君の影

 追ふは侘しき

    昔なりけり



 快晴の青空…降り注ぐ春の日差しは心地よく、厳しく長い冬を払拭して夢見心地にさせる…。

 そんな景色を眺めればふと…近くに彼を感じたような気がして振り向けば、そこには風にそよぐ若草と、無邪気に遊ぶ小鳥だけ…。

 ここには居ない彼を想い、新たな春に…過去ばかりを思い出す…。


 侘しさだけが傍えに立ち…彼の姿をまた…探しだし…。



 朝ぼらけ

  土ぞ香りし

   春雨に

 何そあなぐる

    君のなき里



 朝方から降り始めた小雨は暖かく…微かに土の匂いを運ぶ…。

 本格的に春になる…雪は溶け、山並みは徐々に若草の春の衣へと変わりゆく…。

 そんな緩やかな春の夜明け…別に何があるわけではない。

 彼がいないのだから…ここに求めるものなぞないのだ…。


 この町に…彼はいないのだから…。




[8]前話 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ