第一話 悪の色
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かの機会で。
「漢字で書かれてるぽいけど、なんて書いてあるか全然、読めない」
俺は自分の名前の漢字しか解らないし。
母さんに聞いてみようか……。
いや、駄目だ。クーデリアはこの手紙を家にじゃなく、学校に送ってきたんだ。その意図が解るまで母さんに見せるのは止めておこう。
「これは……どうしよう」
ふりこのように空を左右に揺れるペンダント。
これも母さんに見せない方がいいかも知れない。とりあえずは学校の鞄の中に入れてれば見つからないだろう。
「アカツキー、ご飯出来たよぉ」
「今、行くよー」
────腹、減った。
そう考えると、さっきまで考えていた事を忘れられる。
テーブル一杯に載せられた料理の数々。
母さんは料理好きだから毎日、色んな料理を作ってくれる。俺はそんな母さんの作るご飯が好きだ。
「うん、美味い」
「ふふっ。まだまだ沢山あるから一杯食べてね」
「うん」
母さんは俺の顔を見て笑っている。
「ん? 俺の顔になんか付いてる?」
「何も付いてないよ」
「じゃあ、なんでさっきから俺の顔を見て笑ってるの?」
「あ、ごめん。もしかして気にしてた?」
「いや、気にしてる訳じゃないけど。なんで俺を見て笑ってるかなって思って」
そう言うと母さんは優しく微笑んで。
「アカツキを見てると嬉しいの」
「どういうこと?」
「あんなに小さかったのに、こんなに大きくなってくれてお母さん、嬉しい」
「でも、俺。母さんより身長、低いよ」
「そういう意味じゃないの。ホント、そういう所はあの人そっくりなんだから」
「あの人って、」
「貴方のお父さんよ」
────俺の、父さん。
詳しくは知らないけど俺が産まれる前に死んだらしく、俺は父さんに会ったことがない。
「ねぇ、父さんってどんな人だったの?」
「珍しいわね。貴方が、父さんの事を聞いてくるなんて」
「俺に似てるって言ってたけど。どこら辺が似てるの?」
「そうねぇ……。顔もそうだし、髪型もそうね。髪の色は私に似たけど」
エヘヘへへっと笑う母さん。
写真で何回か父さんの顔を見たことあるけど、そんなに似てたかな。
「話し方もそうね。ご飯も沢山、食べるし」
「へぇー。そうなんだ」
あんまり、似てないような気もしながら俺は母さんの話しを聞いた。
父さんの話をする母さんは楽しそうで……何処か悲しそうだった。
父さんといた頃の記憶と父さんを失った事実を同時に思い出すからだろう。悲しいのなら無理に話さなくてもいいのに……なんて事は言えず、俺は母さんの話を最後まで聞いた。
俺の父さんだった人の話を。
話を聞き終える頃にはテーブルの上の料理を全て食べ終えていた
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