第一話 悪の色
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「じゃあ、俺はこっちだから」
「あ、うん。またね、」
あの態度、あの話し方だと。
明日からは話し掛けて来ることはないだろう。また、俺から離れていく。
慣れた、と言えば聞こえはいいかも知れない。でも、仲良くなれたかも知れない人達を俺はどれだけ失ったのだろうか。
俺の母さんが、偉くなかったら。周りの奴らは俺と普通に接してくれるのだろうか。
別に、一人が寂しいとは思っていない。それに一人ってわけでもない。家に帰れば母さんが居る。近所のうるさい姉妹も居る。母さんの友人だって居るんだ。
俺は一人じゃない。
なのに、なんで────。
「そんな、悲しそうな顔をしてるんだよ」
鏡に映っている俺の顔は、何処か悲しげだった。
自分と母さん達だけが解る俺の数少ない表情。他の人からすれば何を考えているか解らない顔付きに見られているらしいけど俺だって人間だ。怒ることもあれば笑うこともある。
そして、悲しくなることも。
「でも、俺……」
自分の頬をつねったり、引っ張ったり、指でつつく。つねったら痛いし、引っ張ったら伸びる。指でつついたら後が残る。
「なんで、」
やっぱり、俺はおかしい。
「なんで、笑ってるんだろう?」
「ただいま」
扉を開き、靴を脱ぐ。
他の家では靴を履いたまま家に入るらしいけど。うちは靴を脱ぎ、家に入る。なんでも、地球の何処かの国のマナーらしい。
まぁ、色んな所を歩いた靴で家に入るのは汚いよな。
玄関に入ってすぐの隣に掛けてあるスリッパに履き替え、廊下を進む。
「あ、お帰りアカツキ」
母さんの声だ。
でも、何処から……。前後左右を見渡すが、母さんの姿は見当たらない。
「ここ、ここ。上だよ」
「上?」
言われるがままに視線を上に向けるとそこには二階から俺を見下ろす母さんの姿があった。
「お帰りなさい」
「ただいま、母さん」
「晩御飯、もう少しで準備できるからもうちょっと待っててね」
「解った」
短いやりとりをし、俺は自室に向かう。
そういえば────。
ポケットの中にしまいこんだ手紙の事を忘れていた。
なんで、クーデリアは家じゃなく学校の方に手紙を送ったのだろう?それも電子メールではなく紙媒体の手紙で、
「……なんだろ」
家に送ってこなかったって事は母さんに見られたくないもの……なのだろうか?
────母さんに見られたくないもの?
クーデリアはなんでわざわざ学校に手紙を送ってきたのかは解らないけど、これは母さんに見せない方がいいな。
自室の扉を開け、鍵を閉める。
これで誰も入ってこれない。
俺はベットに座り、手紙を開封した。
中身は……紙切れが一枚と。
「ペンダント?」
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