第一話 悪の色
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「手紙?」
「今のご時世で紙媒体の手紙を見られとは思わんかったよ」
俺はそれを受け取り差出人の名前を確認する。
差出人は……クーデリア・オーガス・ミクスタ・バーンスタイン。もう一人の母さんからの手紙だった。
「クーデリア・オーガス・ミクスタ・バーンスタイン……?
それって、火星連合議長の名前じゃあ…………」
「ん、なんだグライアは知らないのか?」
先生はそれを平然のように。
「コイツは、その火星連合議長の息子だよ」
「えぇぇぇぇえ!?」
「うるさいなぁ。そんな驚く事でもないだろ」
また、耳の奥がキーンっとする。
「え、でも、ぇぇ……。
アカツキの名前って暁 オーガスじゃあ……?」
「長いから。省略してた」
「長いからって……そんな理由で、」
「まぁ、どうでもいいじゃん」
「どうでもよくないよ!
……ぁぁ、なんか混乱してきた」
「お前ら、職員室では静かにな。
他の先生方にも迷惑だからな」
そう言われると周りの先生達からの視線を感じる。
それを感じ取ったグライアは「お、お騒がせしました……」と小声で呟いた。
「とまぁ、要件は済んだし。お前らも帰れ」
シッシっと手を振ってくる先生。
「は、はい。それでは失礼します。ほら、アカツキも!」
「あ、失礼します」
「おう。じゃあ、また明日な」
そして俺達は職員室を後にした。
廊下での帰り道、グライアは俺と距離を取ったり開いたりして俺の様子を伺っていた。
「なに?」
「い、いや。その、アカツキ……君は」
「なんで、君呼び?」
「え、だって……」
「普通にアカツキって呼んでよ。君とか様とか堅苦しいし」
「そっ、そぉ……なんだ」
「もしかして、俺を恐がってる?」
「そ、そんなことは!」
「そう、ならいい」
さっきまで普通に話せてたと思うけど俺の母さんの存在を知って、グライアは俺の視線を逸らすようになった。
前にも、こんなことが何回かあった。
俺の母さんの名前を知ると急に表情を青ざめて俺から離れていく。
俺の母さんはそんなに凄いのか……と改めて実感させられた。昔は母さんが何をしているのか、よく解らなかったけど今なら少しは分かる。母さんはとても凄い人だ。
時の人とも称されるほどの功績を出し、火星を一つにまとめあげた。若い頃は(今でも充分、若いけど)革命の乙女って呼ばれてたらしい。
それくらい、クーデリアは凄い。
子供の俺でもクーデリアは凄いと思う。
でも、他の奴らはクーデリアの存在を、母さんの存在を恐怖した。
なんで、恐がってるの?
クーデリアは悪いことなんてしない。とても優しくていい人だ。それを恐がるなんて他の奴らはどうかしている。
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