第一話 悪の色
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、一緒に泣いた。
それを見て、俺はどうも思わなかった。
────女の子と母さんはなんで泣いてるの?
俺は二人に問い掛ける。
女の子は泣き喚き、俺の言葉は耳に届いていない。
母さんは────俺を抱き締め、耳元で囁いた。
「やっぱり、貴方はあの人の子ね……」
あの人……の子?
その時は誰の事か解らなかったけど恐らく、俺が産まれる前に死んだ父親の事だと思う。
あの頃の俺は自分の世界が、自分の全てが、この世界の全てだと思っていた。だから、女の子と母さんが泣いているのを見て……何とも思わなかったし、何も感じなかった。
女の子と母さんはいつ泣き止むのか。俺はただ、そう思いながら母さんの胸に抱かれていた。
この頃から俺は異常だったらしい。
まぁ、俺が異常だと自覚し始めたのは最近だけど。
「ねぇ、アカツキ」
そっぽ向きながら話し掛けてくるグライア。
「ん、」
「いや、その……アカツキは。
なんで、」
「?」
「なんでもない!」
まだ、怒ってるのか。
なんか理不尽な気もするけど、またさっきみたいに怒られるのは嫌だな。
かといってこのまま立って時間を過ごすのは退屈だし……。
空でも眺めていよう。
廊下の先、窓ガラスの向こうに見える雲一つない青空。学校でつまらない授業をするより空を見る方が俺は好きだ。
タメになるような、ならないような授業を一日、何時間もして他の奴らは疲れないのだろうか。俺は耐えられない。だから、自然と眠りに就いている。何も考えず、瞼を閉じて無になりたい。
「は……ぁ。眠い」
「アンタ、さっきまで寝てたのにまだ眠いの?」
「あぁ……ね、」
「ちょっと、立ちながら寝るなんてやめてよね」
あ、一瞬寝てました。
いかんいかん。瞼を擦り、睡魔を遠ざける。
顔でも洗えば少しはスッキリするんだろうけど勝手に歩いたらまた怒られるだろうし。ここは空でも眺めながら時間を潰そう。
「……アンタ、何処見てるの?」
「空だよ」
「何かあるの?」
「いや、特に何も」
「じゃあ、なんで見てるの?」
「そう言われると……なんでだろ」
「訳わかんない」
「多分、俺は空を眺めるのが好きなんだと思う」
「なんにもない空を?」
「だって。今、この目で観ている景色は今しか見られないじゃん。だから、だと思う」
「さっきから思う、思うって……アカツキは本当に好きなものはないの?」
「本当に、好きなもの?」
「心から欲しいって思えるもの。将来なりたいもの。思う、じゃなくてそう思えるものはないの?」
「……グライア、お前って難しい事を言うんだな」
「えっ。そうかな?」
そっぽ向いていた体を俺に向けてグライアは言った。
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