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機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 第三の牙
第一話 悪の色
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 鉄の花は散った。
 
 火星の地で咲き誇り、火星の地で枯れる。それは自ら望んだ結末とも言える。
 だが、それでも鉄の花の根が途絶えた訳ではない。
 まだ、根は残っている。鉄の花が枯れようと命が途絶えた訳じゃない。
 
 俺達は、まだやれる。
 
 これは、不幸な結末を迎えた物語の新たな始まりの物語である。
 
 
 
 
 
 
 XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXX
 
 「───目覚めろ、バエル……いや、アグニカ・カイエル」
 
 男はモビルスーツのコックピットの中で呟いた。
 ガンダムフレーム。コードネーム?ガンダムバエル?
 厄祭戦を終わらせ、ギャラルホルンを築き上げた英雄の乗っていた機体。男はその英雄の乗っていた機体に乗っていた。
 ガンダムフレームは阿頼耶識という特殊なシステムを用いており、普通の人間では動かすどころか起動することさえできない。
 そう、そのはずだ。
 なのに。何故、ガンダムバエルは『起動』したのだろう。
 「そうだ、それでいい」
 男は不敵な笑みを浮かべ言った。
 阿頼耶識インターフェース良好。
 システムオールグリーン。
 あの戦闘の後、大破したと聞いていたが問題ない。むしろ、機体の性能は格段に上がっている。鹵獲後、機体の修復と改修を重ねたのだろう。
 グリップを握りしめ、ガンダムバエルの性能を認識する。
 阿頼耶識を通じて機体の特性、特徴を把握し────それを機体から肉体に引っ張り出す。
 「────ン、グッ」
 機体の情報量に脳は付いていけず、男は吐血した。その量は微々たるものでモビルスーツの操縦に支障はきたさないと判断し改めてグリップを握り締める。
 
 各関節部の同調完了。
 
 閉じていた瞼を開くと、視界の先には仮想のウィンドウが投影されていた。
 これが、阿頼耶識システムの力……。
 まるでモビルスーツが自分の躰の様な錯覚。手を動かせばモビルスーツの手も動かせるような。そんな感覚だった。
 実際、手を動かすような感覚でモビルスーツを動かせるのだろうと男は実感した。
 だが、その前に。
 「まずは、この鎖を断ち切らねぇとな」 
 ガンダムバエルを固定するように巻かれた鋼鉄の鎖。
 情報にあった『天使の鎖』と呼ばれる対モビルアーマー用の鎖だろう。
 厄祭戦時代、モビルアーマーを抑え込む時に使用された当時の副産物。それをガンダムバエルを固定する為に使っているとは……。
 関節部を重点的に固定されており、これを外さない限りモビルスーツを動かすのは無理そうだ。
 だが、それは普通のモビルスーツだったらの話だ。
 「バエル────お前の力を見せてみろ」
 男は阿頼耶識を通じ、バエルに命じた。
 動かせるの訳がない。
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