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ラインハルトを守ります!チート共には負けません!!
第八十六話 マリーンドルフ伯爵令嬢は遠征に反対のようです。
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らめていなかった。だがリッテンハイム侯爵亡き後有力な勢力は今やブラウンシュヴァイク公爵を除いていない。
そう思っていた矢先、彼はふと思いいたったのだ。
ラインハルトを害することのできる勢力はなにも「味方」だけとは限らないことを。
自由惑星同盟をもってラインハルトを滅ぼせばよいのだと、それも彼の望む状況に追い込み、彼の望む戦いの中で死なせることこそが最も彼に恥辱を与えることになるのではないかと。
ベルンシュタイン中将はブラウンシュヴァイク公爵からのつてをフル動員させて帝国軍三長官を動かし、ラインハルトを自由惑星同盟に遠征するように仕向けたのだった。そして、その先の手も既に――。
「失礼いたします。」
入ってきた女性の副官が冷え切ったお茶を交換し、馥郁とした香りの立ち上る新茶で淹れたお茶をそれぞれのカップに淹れ終わるまでエーレンベルク元帥は返答を保留していた。
「そうあってくれればよいのだがな。」
エーレンベルク元帥は短くそういったが、まんざらでもない表情が出ていた。
「あのローエングラム伯は姉に対する皇帝陛下のご寵愛を利用してついには元帥の地位までを手にしました。これは皇帝陛下の外戚同然の待遇。あの者の覇気はそれでとどまるとも思えず、いずれ恐れ多くも帝位の簒奪をたくらむやもしれません。」
「それは卿の考えすぎだろう。」
エーレンベルク元帥は笑いに紛らわしてカップを手に取った。
「考えすぎであってくれればよいと思いますが。」
微妙な含みを持たせたこの言葉にエーレンベルク元帥の手が止まる。冗談に紛らわしたかったのだが、あの金髪の孺子の力量を考えてみると、ベルンシュタイン中将の言葉が想像にとどまるものだとは言い難いと結論付けざるを得なかった。ベルンシュタイン中将から此度だけではなく今までも度々聞かされてきた言葉だった。冗談の範疇と済ませてきたが、なぜか今日は無視できないほどの響きをもってエーレンベルク元帥を捕えたのである。
「卿は想像の翼を大きくさせすぎではないか。」
そう言っただけで、後はこの問題に一切触れず、早々にベルンシュタインを帰したが、その効果のほどは元帥の顔色を一目見れば充分だった。
* * * * *
イルーナはオーベルシュタインを呼んで1時間ほど話した後、ついでバーバラ、ヴァリエ、アレーナらの帝都残留組と極秘会談を行った。その直後、彼女は一人ひそやかに元帥府を抜け出すと、裏手の車庫に向かった。驚愕した表情の警備兵に身分証を示すと、開いた地下の広大な車庫に歩を進める。そこにはティアナのラウディを始めとする車が収められていたが、彼女は躊躇いもなく一台の車に歩み寄った。
真紅の洗練された近未来的なデザインの車はヴァザーリtype9800という最新型モデルで、最高時速は300マイルを軽く超える。
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