第47話<暴走と奇襲と>
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そこまで一気にまくし立てた夕張さんに祥高さんが片手を上げてストップをかけた。夕張さんはそこで説明を中断した。
祥高さんは微笑んで言った。
「詳細は後で聞きますから」
別に彼女は怒っては居ないのだが暗に『空気を読め』という無言の圧力を感じた。
「はい……」
少しだけ上目遣いで祥高さんを見上げるようにした夕張さん。隣の赤城さんも苦笑している。
「では皆さん外へ出ましょうか」
祥高さんの案内で私たちは建物の反対側の出口から外へ出た。
溶接の熱気に帯びた薄暗い工廠から外に出ると海風が当たった。初夏のまだ高い日差しですら心地良かった。参謀たちも各々ホッとしたようだ。
1)神戸は伸びをしている。
2)呉は制服の前を少し開いて扇子で顔を扇いでいる。
3)舞鶴もハンケチで汗を拭いている。
私もコリコリと首を回しながら歩き出していた。
でもふと何気なく振り向いてギョッ! とした。赤城さんが工廠の外まで出てきていたのだ。その長い髪が美保湾の風になびいている。
見送り? ……まさか。
それだけでも珍しいのに……うわっ、止めて下さいって! ニコニコしながら小さく手を振るのは!
別に今生の別れとか特攻作戦に出撃するんじゃないんだからさ。
恥ずかしい!(お互いに)
工廠の窓からは夕張が珍しそうに見ている……おい! お前、作業は終わったのか? 野次馬め……冷や汗が出そうだ。
このとき私は思い出した。さっきの夕張さん以上に赤城さんは『空気を読まない』艦娘の筆頭だった……。あぁ、苦笑。
ふと横を見ると案の定、ニヤニヤした呉が口を開いた。
「さっすが司令官殿! ……女性の指揮も、なかなか手馴れたもンやなぁ」
「いや……」(違うんだって!)
すると神戸が追い討ちをかける。
「僭越ながら司令が当地に着任された意味が分かる気がしました」
「お……」(おい、お前まで!)
しかし舞鶴は相変わらず硬い表情だ。……と思ったら一言。
「なるほど」(な、何がナルホド?)
思わず制帽を取って汗を拭く私。
でも表情を変えないのは案内する祥高さんも同じだった。彼女は赤城さんには目もくれずに淡々と進める。
「次は入渠設備です。ドックと呼ばれることもあります」
冷静な祥高さんが示したその建物は南埠頭の先。海に面した場所に建つ煙突のある建物だった。
「えっと……入渠?」
私は照れ隠しのように言った。少しホッとした。
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