暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
OVA
〜暗躍と進撃の円舞〜
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全く知らない人と知り合いになっている。

身体と精神が乖離していく。それが精神学上、どれだけ危険な状態かは言うまでもない。

イヴが設けた《チケット》は、イヴ自身に対してではない。マイに対しての安全措置(セーフティ)なのだ。

ずい、とカーディナルはイヴの眼を覗き込むように顔を近づけた。

「あと何回だ?何回残っている??それで私の計画を阻むだけの一手が打てるとでも???分かっていると思うが、私の計画は一つの道が閉ざされた程度でドロップアウトするような脆弱性は持っていない。樹形図のように無限に分岐し、最終的には目的に集約される。君がどれだけ致命的な隠し玉を持っていたとしても、それを迂回できる手は山ほど揃っているのだぞ」

さて、と男は言う。

さんざん、さんざんさんざんさんざん焦らし、激昂させ、絶望を与え、その上でそれ以外の道を示さない。その道以外に行くという選択肢を冷酷なまでの速度で削り取っていく。

神は言った。

「さて、君に残されたのは二つの選択肢だ」

実際には、二つではない。

「一つ。私の手から逃れ、君自身が本当に守りたかったマイという一人の無垢を見捨て、自分ひとりだけでいつ消されるとも分からない、出口の見えない逃亡生活という名の無限回廊の中に陥るか」

そう言いながら、男は右手の人差し指を見せつけるように立てる。

詐欺とかそういうものではない。立派な商法の一種だ。

二つの商品を並べ、その悪い方をことさら悪く見せ、本当に売りたい目玉商品の方を強制的に買わせる。情報源がその場限りの客に、初めから選ぶ権利など与えられていない。

だが。

分かった上で。理解した上で。

その上で、逃れられない。

「二つ目は、マイを危険にさらすことになるが、全て計画通りに事が運ぶと私の目的と君の目標。全部が全部丸く収まり、皆が笑うハッピーエンドになるという」

今度は左手。

焦らすように立てられた人差し指を見、イヴは思わず笑った。

どうしても、逃げられなかった。

データコードが水面を形作る不可思議な空間の中、肩を震わせる白濁した少女はゆっくりと悪魔の指を取る。
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