第46話<夢の艦隊と赤城さん>
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艦隊運営は一筋縄ではいかない。物事は、そう簡単にはいかないのだ。
私たちは建物の奥の火花の発生源まで近づく。するとそこには長身の少女が向こう向きに立っていた。艦娘だろう。簡易マスクをして溶接作業を見守っている。
彼女の向こう側に座って作業をしている青いリボンの頭が見えた。もう一人艦娘が居るな。あれが『夕張さん』か?
立っている少女は時々修理を担当している艦娘に指示を出したり声を掛けていた。
「あ……」
私は思わず声を出した。そうだ、あの長髪の後姿には見覚えがあった。その赤いスカート……。
「赤城さん、君か」
そう、彼女は舞鶴から馳せ参じていたんだ。すると少女は私の声に振り返った。
「司令?」
一瞬、驚いたような表情を見せた彼女。
私は言った。
「さっきの戦闘後、姿が見えないな……と思ったら、こんなところに居たんだ」
やや大きい瞳を開いた赤城さんは微笑みながら短く言った。
「はい……久しぶりの本格的な戦闘でしたから」
そう言いながらマスクを外した彼女。キリッとした表情になって私たちに向き直ると敬礼をした。
「舞鶴鎮守府所属の一航戦、赤城と申します!」
私を始め参謀たちも敬礼を返した。一航戦……正規空母の頂点とも言える彼女。やはりその所作はキビキビして気持ちが良い。恐らく私の背後に居る舞鶴も誇らしいだろう。
私たちは直ぐに敬礼を解いた。ところが……どういうわけか赤城さんが凍り付いている。
「どうした?」
……敬礼を解いても良いぞ、と私が言いかけた途端、彼女はボロボロと大粒の涙を流し始めた。
「お……」
焦った私は言葉が続かない。ちょ、ちょっと赤城さんストーップ!
平静を装いながら私は心で叫んだ。いきなり涙なんて……また誤解されるじゃないか!
周りの参謀たちも、この場をどう取り繕って良いのやら少々困惑気味だ。舞鶴なんか完全に呆れたような表情だぞ。
まったく今日は艦娘相手に時間の一時停止が連続して起きる……はぁ、苦手だ。もう堪忍して欲しい。私自身、不慣れなことの連続で、もう心臓が止まりそうだった。
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