第2話「騒乱の序曲」
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しかし言ってしまえば、"ただそれだけ"の異能だ。わざわざ、そんな裏側の住人達がこの力を欲しがっているのか、検討もつかない。
「……暫くは危険だってことは、理解しました。それじゃあ、一旦帰って……」
「――何処に?」
「……へ?」
健が、不思議そうに首を傾げる。
次いで彼は、思いついたようにテレビの電源を付ける。そのチャンネルではニュースが報道されており、画面内のスタジオの画面には、見知った街が映されていた。
しかし画面の半分ほどは真っ黒な煙に覆われており、火事の報道なのだろうと理解する。
『マフィアによる放火!?一家全焼、二人分の焼死体。何の変哲もない一家に一体何が』
そんな見出しと共に、焼けたのであろう家に画面が切り替わる。未だその黒焦げの骨組みから煙を立ち上がらせるその家は、明らかに見覚えがある。
見覚えが、あるに決まっている。
「…………ぁ、……ぇ?」
何時も大学へ通う時、一度は見返す場所。
疲れた体を引きずって、その場所を見るたびに、帰ってきたのだと安らぎを覚えた場所。
「……う、そ……だ」
絵里が産まれてからずっと、20年近くをずっと暮らした場所。沢山の思い出、沢山の安心、それらが在った場所。
絵里を産み、そして育ててくれた両親と、笑顔を浮かべて笑いあった一軒家。
彼女の自宅が、焼け焦げた無残な姿となって、そこに写っていて――。
「ぁ、ああぁぁぁぁぁーーーーっ!?」
即座に、懐から携帯を取り出す。打ち慣れた番号を焦りながらも何とか間違えずに打ち込み、煩わしいコール音を上げてその相手へと繋げようとする。しかしいつまで経っても電話は掛からず、代わりに帰ってきたのは、無機質な電子音。
『お掛けになった電話番号は、現在使われておりません。番号をお確かめになって、もう一度――。』
切る。打ち間違えただけだ、そうに決まっている。少し焦っていた、それだけの話だ。焦るな、電波番号はしっかり覚えている、電話帳にも登録してある、正確に打ち込め。
今度こそ確かに、間違いの余地も何一つない程正確に、何度も確認して打ち込む。全て打ち終わってからコールし、携帯を耳に宛てた。しかし、やはり帰ってくるのは、不愉快な自動音声のみ。
嘘だ、こんなの。こんなこと。
『現場で見つかった焼死体はDNA鑑定により、この家の住人である綾部健三さん、綾部春香さんと見られており、現在、行方不明である夫妻の娘、綾部絵里さんを警察が捜索中との――』
「ーーっ!」
「ストップですよー」
直ぐに立ち上がった絵里の手を、『かずのこ』と呼ばれた少女が掴む。絵里が焦った様子でその手を振り払おうとするも、その前に少女が
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