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霊群の杜
柿の精
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畏れて非常に手厚く祀られるだろう?」
その辺に散らばった柿の実をコツコツと指で叩き、奉はふいに口の端を吊り上げた。


「殺された少年は、この木の下に埋められ…何代にも亘って祀られた」


思わず、掌の干し柿を取り落とした。干し柿はカシ、と地味な音をたてて炬燵の上に転がった。
「あとな…ある時期を境に、この地域に存在した筈の鍛冶場に関する記録が途絶えているんだよねぇ。元々流れ者だった彼らのことだ。鉱脈の資源が底をついたか何かでこの地に見切りをつけたのか…もしくは」
少年は、鍛冶場もろとも葬られたのか。
「鍛冶場もろとも…って何だよ…」
鴫崎が目を見開いた。こいつは意外にも、俺よりも性善説寄りの人間なのだ。
「元々流れ者の集団だろう。一夜のうちに集落ごと消えたとしても、それほど不思議とは思われないし、そういう流れ者は沢山いたからねぇ」
「うっわ……引くわー……」
いや軽いな感想!
「どちらにせよ、全ては柿の下よ」
「お前…それ知ってて、よくその柿を食えるなぁ…」


「お前は知らなかったのに、何故食えないんだろうねぇ」


密かに、だが頑なに、この柿を食わなかったのだ俺は。
「…小さい頃、だれかにその話を聞いたのかも知れない」
「民話は『めでたしめでたし』でお仕舞いだ。その続きは俺しか知らない。お前に話すのは初めてなんだがねぇ…お前さっき、何て云ったか。柿の実が、自分を睨んでいる?」
俺は改めて炬燵の上に転がる干し柿を見つめた。睨んでいる…そうなんだが。
「―――柿の下の子は、まだ恨んでいるんだろうか」
「さあねぇ」
俺はその子じゃないからねぇ。などと呟き、奉は転がった干し柿を見下ろした。
「食ってみたらどうだ」
何か分かるかもねぇ。奉はそう云って、干し柿を拾い上げて俺の掌に乗せた。一年かけて干からびたそれは、何か海底にでも棲むマイナーな生き物のようだ。正直、この柿を食うことへのためらいは、さっきと比べていや増すばかりなんだが、俺は仕方なく口に含んだ。


「―――甘い」


驚いた。
滋味に富むというか、自然と体に沁み込むような心地良い甘みが口中を満たした。俺は干し柿は好きではないが、一口、もう一口と食べ進めていくうちに、いつの間にか全部食っていた。
「……分かったか」
「うぅむ…」
普通の、干し柿だった。
俺を睨んでいたのではない。根拠は全然ないんだが、そんな気がした。
柿は俺を、凝視していたんだ。
どういうわけか『干し柿担当』にされた俺が熟した実を蔑ろにしないか、監視されていただけなのだ。多分。
恨みを持つ者が、あんなに優しい甘さになるはずがない。俺は拍子抜けのあまり、仰向けに倒れた。
「だからいい加減、忘れたらいいのにねぇ…お前はいつまでも変わらず、要らんことで悩
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