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Element Magic Trinity
そうして君は泣いていた
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「……ったく、いつまでモメてる気よアンタ達!さっさと決めなさいな、蹴り飛ばすわよ!」

我慢の限界を迎えたらしいティアが、がっと怒鳴って立ち上がった。
……その右手に魔力を集束させていたのは、きっと見間違いだろう。大海怒号(アクエリアスレイヴ)をぶっ放す気なんてない、はずである。



……まあ、予想通りというか、何というか。
きっかり三秒後、二人目がけて右手を突き出したティアを、たまたま近くにいたライアーが必死に、命の危険を感じつつも逃げずにめげずに宥めていなければ、大惨事になっていたかもしれなかった。








「行ってらっしゃい、気を付けてねー」

何だかんだと揉めに揉めて、最終的にライアーが平和的解決策として言い出したじゃんけんによって数十回のあいこの末ナツが勝ち、ようやく彼等は出発した。見送ったライアーがげっそりしているのはアランに任せるとして、振り返された手に全力で応えたルーはテーブルに戻って息を吐く。
注文したアイスココアは既に空、ルーシィは仕事、アルカは雑誌の取材がどうのこうので家を出てからは別行動。ティアもいない。話せる相手なら沢山いるし、やる事だって探せばいくらだってあるのだけれど、なんというか、そうじゃなくて。

「うーん…」

小さく唸って、額をテーブルに押し当てる。きっと今の僕は眠そうに見えるんだろうな、なんて他人事のように考えながら、崩れた思考をぱらぱらと適当に積み上げていく。
今日は調子が悪い。体調ではなく、調子が悪い。その理由は嫌というほど解っていて、だからこそ誰か、べったりくっついていても何ら違和感のない相手が、今日だけはほしかったのだけれど。

「強制は出来ないよね、っと…」

呟いて、立ち上がる。空のグラスは知らないうちに回収されていた。
傍らに置いた鞄を掴み、がやがやと喧しい中を歩く。かけられた声に手を振り返して、カウンターで談笑していたミラに声をかけた。

「ねえミラ、伝言頼んでもいいかな?」
「伝言?ええ、いいわよ」
「ありがと!あのね、アルカになんだけど、ちょっと遠出してきますって。夕飯までには帰る予定だけど、遅くなっても心配しないでねって、伝えてもらえるかな」

早く帰って来るつもりだが、念の為。ミラに伝えておけば間違いはないだろう。
手近な紙にささっと伝言をメモしたミラが「解った、伝えておくわね」と頷いたのに笑顔を返して、ルーは駆け足気味にギルドを出た。








「……」
「その、ティア…?どうかしたのか、何か悩みでも」
「ちょっと黙ってて」
「……ああ」

恐る恐る声をかけたヴィーテルシアがぴしりと固まった。コツを掴んで以降多用している青年姿の整った顔がさっと青くなって、ふるふる震えながら泣
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