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Element Magic Trinity
そうして君は泣いていた
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ー…まあ、うん」
「どうせどっちも討伐系なんだから、ぐだぐだ言ってないでどっちも受けりゃいいでしょうに。依頼先、然程遠くないでしょ」

こつこつと人差し指でテーブルを叩く。待たされ始めてそろそろ一時間、短気な彼女にしては持った方だろう。
ルーシィよりも後にギルドに顔を出したティアに「仕事行こうぜ!」と声をかけたのがナツで、「久しぶりにチームで、な」と念を押したのがエルザ。断る理由がなかったのか断るのが面倒だったのか了承してからかれこれ長々と待たされる原因は、まあ言うまでもない。仕事を選んでいたナツとグレイが、図ったようにぴったり同じタイミングで別々の依頼書を指して、そうなればそこから揉めて殴る蹴るの喧嘩に発展するのは当然といえば当然の事で。
片やマグノリアから徒歩でいける距離での討伐依頼、片や行き帰りに列車は必須だが前者より報酬のいい討伐依頼。付け加えて、前者をこなしてから列車で後者の依頼先に行き、終わらせてギルドに帰って来たとしても、例え仕事が長引いたって明日にはならない。その結果、前者派のナツと後者派のグレイ、もう面倒だからどっちも行けばいいじゃない派のティアと、意見は真っ二つどころか綺麗に三つに割れてしまっていた。

「…ルーシィ、今日仕事なの?」
「そろそろ家賃がね……この間の仕事でアイツ等があんなにいろいろ壊さなければ、それで今月分の家賃どうにかなったのに…」
「そっかー…」

泣き言を吐きつつ元凶の一人に目を向ければ、苺のパンケーキ(これは奢りではない)を一口口に運んだ青髪の彼女は小首を傾げる。それは思い当たる節がないといった不思議そうな動作ではなく、「私達を誘った上で報酬が丸々入ると思っていたとはおかしな奴め」とでも言いたげなそれで、口角が小さく上がっている辺り、揶揄っているのかもしれない。

「……うん、頑張ってね。もし報酬足りなかったらいつでも言って?また二人で仕事行こっ」
「うう…ごめんねルー、いつもいつも」

隣のルーがへらりと笑う。申し訳なくなりながら彼の方を向いて、いつも通りのはずのそれに少し引っかかった。
何が、と聞かれると困るのだけれど、何かが詰まるような感覚。幼くて柔らかい、見慣れた笑みがどこか遠いものに感じる。数秒にも満たない僅かな違和感に、思わずルーの顔をじっと見つめた。

「?どうかしたの、ルーシィ。僕の顔、何かついてる?」
「え?…ううん、何でもない!あ、でも寝癖はついてる」
「え、どこどこ!?」

不思議そうに首を傾げたルーにはぐらかしつつそう言えば、慌てたように髪をぺたぺたと触り出す。その姿はいつも通りの彼で、さっき感じた引っ掛かりはすっとルーシィの中に消えていった。ただの見間違い、気のせい。彼も疲れているのかもしれないからあまり頼り過ぎないように、とだけ思って。


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