152部分:第十三話 暖かい風その十一
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第十三話 暖かい風その十一
「戦いを御覧に」
「いえ、私はここにいます」
しかし彼女は動こうとはしなかった。静かに魔矢に述べるだけだった。
「後で話を聞くだけで」
「そうですか。それでは」
「戦いが終わったからといってそれで終わりではない」
目を閉じて静かに述べる夜叉姫であった。
「忍とは因果な生き方を強いられるものです」
「ですがそれは」
「はい、わかっています」
また魔矢に答えた。
「それは運命、だから仕方ないのです」
「その通りです。ですから」
夜叉姫に対してまた言う。
「今の彼等もまた」
「まだ戦いは続きます」
夜叉姫は立ち上がった。そのうえで机から離れた。控える魔矢から目を離して述べるのだった。
「まだ。ですから」
「ですから」
「彼等が死ななければ。それで」
「それは心配しなくともよいかと」
冷静に夜叉姫に言葉を返すのだった。
「壬生と八将軍です。そうおいそれとは」
「そうですね。それでは今は」
「はい」
「彼等の望む通りにさせてあげましょう。統領として」
こう述べた後は動かないのだった。この頃姫子と蘭子もまた自分達の学園の総長室にいた。姫子は総長の椅子に座り蘭子に対して声をかけていた。
「平和になったのはいいですけれど」
「はい」
「小次郎さん達は。戦いを続けられているのですね」
寂しげに語るのだった。
「まだ。そしてこれからも」
「忍の戦いは永遠です」
二人のやり取りは奇しくも夜叉姫と魔矢のそれとほぼ同じであった。
「ですから。それは」
「わかっています。ですが」
それでも姫子は言うのだった。
「小次郎さんは。これからも」
「御安心下さい、姫様」
心配そうな顔になった姫子に対して微笑んでみせた。
「あの男はそう簡単には死にません」
「そうでしょうか」
「馬鹿です」
いきなりいつも小次郎に言っていた言葉を出してもみせた。
「馬鹿ですが心は確かです」
「心はですか」
「身体もまた。そう簡単には死にません」
「では安心していいのですね」
「そうです。まず私達がすることは」
「はい」
話がそこに移る。
「明日の朝食の用意をしておきましょう」
「朝食のですか」
「九人分です」
また微笑んだ顔になっている蘭子であった。
「おそらく朝には帰って来るでしょうからその時に」
「わかりました。ではお米とお味噌汁は私が」
「お任せできますか」
「お野菜のお味噌汁がいいですよね」
姫子もまた微笑んで蘭子に問うのであった。
「今回は」
「それは姫子様にお任せします。野菜は屋敷にありますので」
「そうですか」
「何でしたら鶏か豚も入れられて」
「それはいいですね」
今の蘭子の提案にさらに笑顔になる姫子
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