第45話<頭垂れる山城さん>(改1.2)
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だ。現に龍田さんがノンビリと紅茶を飲んでいる。
まずは呉が口を開いた。
「ここは本当に鎮守府か?」
「まさにリゾートですね」
神戸が気の利いたことを言う。
「やはり艦娘だけの鎮守府だと、こういう砕けた雰囲気になるのだ」
舞鶴もそう言ったが、それは決して批判している口調ではなかった。
「もし今が戦時下でなければ美保の辺りも、そういう場所になるかも知れません」
私も妙な補足を入れてしまった。
祥高さんが説明する。
「ここも、さほど広くありません。現在は70名近い艦娘がいますから利用する際は班ごとに時間をずらして食事を取るようにしています」
私は先日の夜戦の時間を思い出していた。あの夜戦バカ、元気になったかな?
「司令……」
突然、私の背後から小声で誰かが声をかけてきた。振り返ると、そこに居たのは山城さんだった。戦闘後にすぐに入渠したのか体はもう元に戻っていた。
「ああ、君か」
山城さん……最初に執務室で出会った時とは印象がガラリと違うな。
「あの……」
何か言い難そうだ。私の周りに参謀たちが居るからだろうか? ちょっと間を空けて小さい声でモジモジしている。
「どうした?」
参謀たちの案内の時間もあるから、ちょっと急き立てる私だった。大人気ないか?
すると彼女は意を決したように頭を下げた。
「司令……その……有り難う御座いました」
いきなりの言葉で驚いた。さほど長くはない彼女の髪型だが、なぜか柳のように垂れ下がるんだな。
ちょうど食堂に斜めに差し込んだ日の光。その陰影が彼女の場合は鬼気迫る。
私は腰砕け気味に応えた。
「あぁ無事で良かったよ」
山城さんは、ゆっくりと顔を上げる。私は今度はギョッとした。
目が潤んでいる!
その瞳は日光に乱反射してギラギラしているのか? ……ちょっとコレはヤバい気配が漂う。
「いったん屋外へ出ましょう」
直ぐに機転を利かせた祥高さんが、私たちをウッドデッキの方へ促してくれた。
やれやれ……助かった!
それでも気になった私が振り返ると数人の艦娘が肩を震わせている山城さんを囲んで、なだめている。 ……まさか泣いているのか?
『おい誤解するなよ! 別に私が虐めて泣かせたんじゃないからな!』
……と内心、叫んでいた私。参謀たちも無口になった。
もし私たちが、あのまま留まっていたら? 感情的な山城さんだ。本当に何をしでかすか分からなかった。
でも彼女の意図した『お礼』って何のことだろうか? 今朝の美保湾の戦いで私が思わず叫んだ『引き返せ』という撤退命令のことかな?
山城さんは一途な子だ。それに基本的な火力は備わっている彼女だから……今までも、
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