魔法使い? 私は博麗の巫女よ
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とある涼し気な昼下がり。
私はいつもの巫女服を身につけ、神社の周りを掃除していた。私の管理する「博麗神社」には、相変わらず参拝客などやってはこない。御神体様の名前も知らない私が巫女をしているせいか、ただ単に来るのが面倒なだけかーーまぁ、今は私しかいない。
先ほど昼食としておにぎりを食べたが、あまり腹に溜まらない。夏の幻想郷の豊かの緑が風に揺れ、私の長い髪も靡いた。その気持ち良さと共に、声も流れてくる。
『オーイ霊夢! 霊夢〜!!』
誰かが私の神社へやってくる。それは石の階段を駆け上がり、鳥居の奥から姿を現した。黒い魔女服に白いエプロン、大きな魔法使いの帽子を被った私の友人ーー霧雨魔理沙だ。
「ん? 魔理沙、どうかしたの? 昼食はもうないわよ」
魔理沙は手に本を持っていた。また紅魔館からくすねてきたのだろうか。盗品を神社を持ち込むのは止めろ。
「いやぁ、パチュリーに面白そうな本を貸してもらったからさ。暇だし神社で読もうと思ってな。昼食はさっき咲夜の紅茶を飲んできたから良いよ」
「…貸してもらったじゃなくて、盗んできたの間違いじゃない?」
「違う違う〜…んま、良いだろ。どうせ霊夢も暇だろ? 一緒に読もうぜ〜、何だか魔道書じゃないっぽいしな。物語みたいだ」
白黒の魔女は、本を片手にスキップをしながら私の元へと駆け寄ってきた。私は苟も「博麗神社」の巫女”博麗霊夢”なわけなのだが、仕事は掃除程度。参拝客が来ないんじゃ仕方がない。
私も魔理沙の暇つぶしに付き合ってやろう。
「どんな題名?」
「んー? 『ハリー・ポッターと賢者の石』ってさ。ハリー・ポッターって誰?」
「私が知るわけないでしょ。ふーん、まぁ面白いかもしれないわね」
「だろ? ほら」
魔理沙は私に本を渡してきた。皮表紙で、随分と重い新しい本だった。表紙には、黒い文字でさっき魔理沙が言った通りの題名が書かれている。何だか魔力が流れているような気配がして、私は不信感を覚えた。魔理沙が「開け開け」しつこいので、ため息をつきつつ私は本を開いた。
「何々…? プリベット通り4番地の住人ダーズリー夫妻は、『おかげさまで私達は何処からどう見てもまともな人間です』というのが自慢だった。…”まとも”ねぇ…幻想郷にそんな人間は存在しないわよ」
ふと幻想郷の人間の姿が頭に浮かぶ。魔理沙、咲夜、早苗ーー碌な奴がいない。
「そりゃあまぁな。外の世界の本みたいだから」
「へぇ…」
私はページを捲っていく。途端、何の変哲もない本の紙がとてもつもない光を放ち始めた。あまりの眩さに目も向けられず、私は思わず目を瞑る。
魔理沙の叫び声も束の間、私はすぐさま意識を失った。美しい景色の咲き乱れる幻想郷の守り主は、たった一冊の本によ
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