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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二十六話 遠征軍の混乱
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ヴァーンシャッフェ連隊長も彼を一瞬だけ見たが直ぐ視線を外した。
ヴァレンシュタイン大佐は周囲を気にすることなくこちらに向かって歩いて来た。一瞬だけ俺達を見たが直ぐ視線を外し無表情に歩く。
「ヴァレンシュタイン大佐」
俺がヴァレンシュタイン大佐を呼び止めるとヴァーンシャッフェ連隊長が顔を顰めるのが分かった。構うものか。ヴァレンシュタインは足を止めこちらに視線を向けた。
「作戦案はまとまりましたか」
俺の問いにヴァレンシュタインは無言で首を横に振った。そして微かに笑みを浮かべながら近づいてきた。
「何も決まりません、元々作戦案など有って無いような物ですからね。笑い話のような会議でしたよ」
笑い話のような会議? その言葉にヴァーンシャッフェ連隊長がますます顔を顰めた。そしてブルームハルト、デア・デッケンは訝しげな表情をしている。
「先程ストレッチャーで運ばれていったのは……」
「ああ、あれですか、五月蠅い小バエが飛んでいたので追い払っただけです。まあ、あれはしつこいですからね。いずれはまた現れるでしょうが当分は大丈夫でしょう。幸いこれから寒くなりますし……」
そう言うと可笑しそうにクスクスと笑い始めた。
ヴァーンシャッフェ連隊長がさらに顔を顰めた。周囲の人間も俺達を見ている。何処か恐々といった感じだ。その気持ちは分かる、美人だが怖いところのある美人、それが俺のヴァレンシュタイン評だ。まともな男なら近づかんだろう。だが俺はまともじゃないんでな。全然問題ない。
たぶんフォーク中佐を叩き潰してロボス元帥を怒らせたのだろう。他の軍人なら自分のしたことに蒼褪めているはずだ。だが目の前の彼は楽しそうに笑っている……。
見たかったな、どんなふうにあの男を叩き潰したのか……。優雅に、辛辣に、そして容赦なく叩き潰したに違いない。俺はその姿に魅入られたように喝采を送っていただろう……。
「ヴァレンシュタイン大佐」
声をかけてくる男達がいた、二人だ。三十には間が有るだろう、一人は長身で体格の良い男だ、そしてもう一人は中肉中背……。ヴァレンシュタインはチラっと彼らを見ると笑みを収め溜息を吐いた。どうやら苦手な相手らしい。
「紹介しましょう。彼らは作戦参謀のワイドボーン大佐、ヤン大佐です」
ヴァレンシュタインの言葉に二人が挨拶をしてきた。長身の男がワイドボーン、中肉中背がヤン。
片方は十年来の秀才、もう片方はエル・ファシルの英雄か。なかなか豪華な顔ぶれだ。ここ最近ヴァレンシュタインと組んでいると聞いている。グリーンヒル参謀長の信頼が厚いとも……。
「ワイドボーン大佐、ヤン大佐、こちらはローゼンリッターのヴァーンシャッフェ准将、シェーンコップ大佐、ブルームハルト大尉、デア・デッケン大尉、ヴァンフリートで一緒
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