第44話<鎮守府の沿革>
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様の反応。
ここ山陰は私の「出身地」だからな。その計画の主旨の部分は何となく印象に残っていた。
彼女はボードに資料を提示しながら続ける。
「この鎮守府は山陰特有の入り組んだ地形が多いこと考慮しています。ですから戦艦や正規空母よりは運用面で軽巡や小回りの利く駆逐艦が重点的に編成されています」
「なるほど」
「それで大型艦よりも駆逐艦が多いんですね」
「ふむ」
反応が良い参謀たち。
私は挙手をして彼女に突っ込んでみた。
「質問良いかな?」
「どうぞ」
「美保には潜水艦が居ないよな……確か今は陸軍の「まるゆ」が仮停泊しているけど」
「はい」
「さっきの将校に直訴すべきだったけど……美保に潜水艦を、もう少し増やす計画は無かったのかなぁ?」
「……」
彼女に聞くべき内容でもないし、困らせる意図も無いんだが。さすがに祥高さんは黙ってしまった。
呉が言う。
「そういえば今朝の戦闘でも敵は水深の浅い中海に出たな」
「ああ、そうでしたね」
「……」
舞鶴は黙っているが祥高さんも黙ってしまった。これはまずいかも。
私は少し慌てたように言った。
「いや君を困らせるつもりは無い……ただ美保の守りを考えたら今後は潜水艦も必須だろうと思ってね」
呉が言う。
「まぁ司令殿も着任間もないですから。何事も『徐々に』でしょ?」
「はぁ」
まさか呉に諭されるとは思わなかった。ちょっと恥ずかしくなった。
私は祥高さんに言った。
「いや済まない。この件は改めて君と相談した上で軍令部に直訴するなら、また私から手続きするよ」
すると彼女は応えた。
「いえ私なら大丈夫です。それに軍令部も将校も、きちんと美保の将来は考えて下さっていますから……装備補充についても心配なさらなくても大丈夫だと思います」
「え? ……そうなの?」
ちょっと驚いた。
「はい」
確信を持って応える彼女。
え? えぇ? 彼女のこの応対ぶり……美保の将来について妙に確信を持っている。
「……」
いかん、いかん。私は慌てて頭を振った。独りで驚いて時間を浪費してはいけない。
パンパンと頬を軽く叩いた私は改めて彼女に言った。
「すまない、続けてくれるかな?」
「はい……では続けます」
彼女は軽く微笑むと再びボードへ向き直った。相変わらず沈着冷静と言うか度胸があるというか……切り替えの早い彼女だった。
「当地は埋立地を開削したため、かなり規模の小さな鎮守府となっています」
ようやく舞鶴もメモを出して書き始めた。
「ここは元々、弓ヶ浜半島による遠浅の地形で水深が深く出来ない事情があります。従って一般の艦船は配備せず艦娘だけの鎮守府となりました」
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