147部分:第十三話 暖かい風その六
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はね。そうでしょ」
「そうだ」
これは武蔵が最もよくわかっていた。彼は妹として絵里奈を何処までも愛していたのである。この心に偽りもやましいところもない。
「御前は俺の妹だ。だから」
「だから。小次郎と結婚したかったんだけれど」
「俺とかよ」
「もうそれもできないね」
申し訳なさそうに小次郎に述べる。
「これで。お別れだから」
「だから行くな、絵里奈!」
また必死に絵里奈を呼び止める。
「御前がいなくなったら俺はもう」
「もう。私の為に闘わなくていいから」
必死に呼び止めようとする兄に対して告げた。
「さよなら。暖かい風を見てね」
「絵里奈、行くな!」
妹に駆け寄り必死に呼び止める。しかしその姿はさらに消えていくだけだった。
「絵里奈、絵里奈ーーーーーーーーーーっ!」
だが絵里奈の姿は消えてしまった。後には何も残ってはいなかった。武蔵は遂に一人になってしまったのだった。
「終わりです」
ここで夜叉姫が席を立って言った。
「この勝負、決着がつきました」
「何っ!?」
「それは」
呆然とする武蔵はそのままに小次郎と姫子達が夜叉姫の言葉に一斉に顔を向けた。
「夜叉の姫さんよ、そりゃどういう意味だよ」
「夜叉姫、それは一体」
「何を考えている、闘いはまだ」
「飛鳥武蔵はもう闘うことはできません」
これが夜叉姫の言葉であった。
「最早。ですからこの戦いは」
「風魔と夜叉の戦いって意味か」
「そう考えるのなら考えるといいでしょう」
小次郎に対して答えた。
「どちらにしろもう。武蔵は」
「そうだな。どう見ても戦闘不能だ」
蘭子もそう見ていた。
「ではこの戦いは」
「無念ですが貴方達の勝利です」
潔く敗北を認める夜叉姫だった。
「全ては決しました」
「そうか。それではだ」
「お行きなさい」
小次郎、そして姫子達にまた告げる。
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