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Sword Art Rider-Awakening Clock Up
第75層の驚異
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。だが俺にはわかっていた。彼の無機質、金属質は、SAOに囚われる前から知っている。

ヒースクリフは笑みを(にじ)ませたまま言葉を続けた。

「最終的に私の前に立つのはキミだと予想していたよ、ネザー君。私の一番弟子であり、私のことを誰よりも理解しているキミこそが、魔王に対する勇者の役割を担うはずだった。だが、キミは私の予想を遥かに超える力を見せた。攻撃速度といい、その優れた洞察力といい、現実同様にキミの力も大したものだった。まあ……この想定外の展開も、ネットワークRPGの醍醐味(だいごみ)と言うべきかな……」

その時、凍り付いたように動きを止めていたプレイヤーの1人がゆっくりと立ち上がった。血盟騎士団の幹部を務める男だ。朴訥(ぼくとつ)そうなその細い眼に、凄惨(せいさん)な苦悩の色が宿っている。

「お、俺達の忠誠……希望を……よくも……よくも……」

巨大な斧槍を握り締め、

「よくもーーーッ!!」

絶叫しながら地を蹴った。止める間もなく、大きく振りかぶった重武器が茅場へと……。

だが、ヒースクリフの動きのほうが一瞬速かった。左手を振り、出現したウィンドウを素早く操作したかと思うと、男の体は空中で停止し、次いで床に音を立てて落下した。HPバーにグリーンの枠が点滅している。麻痺状態だ。茅場はそのまま手を止めずにウィンドウを操り続けた。

周りを見ると、キリトやアスナを含めるプレイヤー達が次々と地面に膝をつきながら倒れていった。気づけば、俺とヒースクリフ以外の全員が麻痺状態となっていた。

俺は右手に持つ剣を鞘に収めることもなく、ヒースクリフに向かって視線を上げる。

「……この場で全員殺して隠蔽(いんぺい)でもする気か?」

「まさか。そんな理不尽な真似はしないさ」

紅衣の男は微笑を浮かべたまま首を左右に振った。

「こうなってしまっては致し方ない。私は最上層の《紅玉(こうぎょく)(きゅう)》でキミ達の訪れを待つことにするよ。ここまで育ててきた血盟騎士団、そして攻略組プレイヤー諸君を途中で放り出すのは不本意だが、何、キミ達の力ならきっと辿り着けるさ。だが……その前に……」

ヒースクリフは言葉を切ると、圧倒的な意思力を感じさせるその眼で俺を見据えてきた。右手の剣を軽く床に突き立て、高く澄んだ金属音が周囲の空気を切り裂く。

「ネザー君、キミには私の正体を看破した褒美を与えなければな。チャンスをやろう」

「チャンス?」

「今この場で私と1対1で戦うチャンスだ。もしキミが私に勝てばゲームはクリアされ、キミを含めた全プレイヤーがこの世界からログアウトできる。……どうかな?」

その言葉を聞いた途端、俺から少し離れた位置で自由にならない体を必死に動かすキリトが叫んだ。


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