暁 〜小説投稿サイト〜
Sword Art Rider-Awakening Clock Up
第75層の驚異
[9/12]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
右手に剣を下げたまま、口を開いた。

「これが伝説の正体だ。こいつのHPは、どうあろうと注意域(イエロー)にまで落ちないようシステムに保護されている。……この世界で不死属性を持つ者といえば、システム管理者以外あり得ない。この世界の管理者といえば……1人だけだ」

言葉を切り、上空をちらりと見やる。

「……この世界に来てから……ずっと疑問に思ってきた。奴は今、どこで俺達プレイヤーを観察し、世界を調整しているのか……?俺はゲームを進めるうちに、わかったことがある」

俺は紅衣の聖騎士にまっすぐ視線を据え、言った。

「《他人のやっているRPGを(はた)から眺めるほどつまらないつまらないことはない》とな。……そうだろ、茅場晶彦」

全てが凍りついたような静寂が周囲に満ちた。

ヒースクリフは無表情のままジッと俺に視線を向けたままだ。周りのプレイヤー達は皆身動き1つしない。いや、できないと言うべきだ。

その場にいたプレイヤー達の瞳は、虚無の空間を覗き込んでいるようにヒースクリフに集まった。全員の注目が集まる中、ヒースクリフの唇が動き、言葉を発した。

「……なぜ気づいたのか、参考までに教えてもらえるかな?」

「……ヒースクリフとしてのあんたと初めて会った頃から、ずっと疑ってた。あんたの、全ての物事を見通すようなその眼は、今でもよく覚えているからな。そして、決定的に怪しいと思ったのは、あんたとのデュエルだ。最後の一瞬、あんたは余りにも速過ぎた。普通のプレイヤーが、あんなに速く動けるはずがない」

「やはりそうか。あれは私にとっても痛恨事だった。君の動きに圧倒されて、ついシステムのオーバーアシストを使ってしまったよ」

ヒースクリフはゆっくり頷くと、表情を見せた。唇の片端(かたはし)を歪め、(ほの)かな苦笑の色を浮かべる。

「本当なら95層に達するまでは明かさないつもりだったが……」

ゆっくりとプレイヤー達を見回し、笑みの色合いを超然としたものに変え、紅衣の聖騎士は堂々と宣言した。

「確かに私は《茅場晶彦》だ。付け加えれば、最上層で君達を待つはずだったこのゲームの最終ボスでもある」

衝撃的な宣言に、俺以外のプレイヤー達は騒然。中にはよろめく者もいた。

「……最強のプレイヤーが一転、最悪のラスボスとはな。あまりいいシナリオとは言えないぞ」

「私はなかなかいいシナリオだと思うがね。しかし、たかが4分の3地点で正体を看破されるとは。さすがにこれは私のシナリオにもなかった」

このゲームの開発者にして1万人の精神を虜囚(りょしゅう)した男、茅場晶彦は見覚えのある薄い笑みを浮かべながら肩を(すく)めた。ヒースクリフとしてのその容貌(ようぼう)は、現実世界の茅場晶彦とは明らかに異なる
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ