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Sword Art Rider-Awakening Clock Up
第75層の驚異
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か……あの男だろう。

俺は視線を部屋の奥に向けた。そこには、他の者が全員床に伏す中、背筋を伸ばして毅然(きぜん)と立つ紅衣の姿があった。ヒースクリフだ。

俺とキリトが2人掛かりでどうにか防ぎ続けたあの巨大な骨鎌を、1人で(さば)ききったのだ。普通なら披露(ひろう)困憊(こんぱい)して倒れるところだ。だが、悠揚(ゆうよう)迫らぬ立ち姿には、精神的な消耗など皆無(かいむ)と思わせるものがあった。

俺は、ただひたすらヒースクリフの横顔を見つめ続けた。伝説と呼ばれた男の表情はあくまで穏やかだ。無言で、床に(うずくま)る血盟騎士団メンバーや他のプレイヤー達を見下ろしている。だが、その視線は仲間を(いつく)しむような視線ではない。

言わば、檻の中に閉じ込められた実験動物を観察するような眼。俺達と同じ場所に立っているのではない。あれは、遥かな高みから慈悲(じひ)を垂れる__神の視線。

その刹那、俺の全身に覚えのある感覚が貫いた。

俺の中に生まれた、ある予感。種がみるみる膨らみ、疑念の芽を伸ばしていく。そして__確信できた。

俺は近くに放り出されていた片手剣を右手で握り、地面を蹴った。ヒースクリフとの距離約10メートル、床ギリギリの高さを全速で一瞬にして駆け抜け、右手の剣を(ひね)りながら突き上げた。片手剣の基本突進技《レイジスパイク》。威力の弱い技ゆえこれが命中してもヒースクリフが死ぬことはないが__もし、俺の予想通りなら__。

ペールブルーの閃光を引きながら左側面より迫る剣尖(けんせん)に、ヒースクリフはさすがの反応速度で気づき、眼を見開いて驚愕の表情を浮かべた。咄嗟に左手の盾を掲げ、ガードしようとする。

しかしその動きの(くせ)を、俺はデュエルの時に何度も見て覚えていた。一条の光線となった俺の剣が、空中で鋭角に軌道を変え、盾の緑を掠めてヒースクリフの胸に突き立つ。

寸前で、眼に見えぬ障壁に激突し、俺の腕に激しい衝撃が伝わった。紫の閃光が炸裂し、俺とヒースクリフの間に同じく紫のメッセージが表示された。

【Immortal Object】__不死存在。有限の存在たるプレイヤー達にはあり得ない属性だった。

そのメッセージを見た周囲のプレイヤー達が驚きの表情を浮かべ、ぴたりと動きを止めた。キリトも、アスナも、クラインも、エギルも、部屋にいるほとんどのプレイヤー達も動かなかった。静寂の中、ゆっくりとシステムメッセージは消滅した。

俺は剣を引き、軽く後ろに跳んでヒースクリフとの間に距離を取った。キリトの隣に立つアスナが、言った。

「システム的不死……?…って…どういうことなんですか…団長…?」

戸惑ったようなアスナの声に、ヒースクリフは答えず厳しい表情でジッと俺を見据えている。俺は
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