第1話「舞えない黒蝶のバレリーナ」
[4/6]
[1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
わった。
次の瞬間にはその絵が輝き、光を撒き散らし始める。
「私は、貴方達には加担しない……絶対に!」
光の中から生まれたのは、スケッチブックに描かれていた大きな鳥。流石にスケッチブックと同じ程度のサイズではあるが、羽ばたくその鳥の足に捕まった女性の体が、ふわりと宙に浮き上がる。その鳥が大きく羽ばたくと同時、周囲には暴風が吹き荒れ、ぐんぐんとその高度を高めていった。
やがてその姿は粒ほどにまで縮んでいき、空の青の中へと吸い込まれて行く。
「……あーあ、逃しちゃった。達也がボサッとしてるからー」
「酷い責任転嫁を見た」
酷い言いがかりを付けてくる健にツッコミつつ、みすみす逃してしまった失態に内心で舌打ちする。本来なら、無理矢理に止めてでも保護するべきだった。健にも稀に言われるが、やはり自分は詰めが甘いのだと改めて思い知る。
運良く掴んだ手掛かりを、こうも簡単に逃してしまうとは。
「さてさて、冗談はこの位にして……少し拙いね。達也、少し頼みがあるんだけれど」
そう切り出した健の手にはいつの間にか、先程の鳥の羽が載っていた。
◇ ◇ ◇
「――という訳で、どうにもあちらさん何やら事情が立て込んでいるらしいね。足取りも見失った。依頼は失敗だね……ごめんよ」
「そうですか……」
三日後。
約束の期日となり探偵事務所に訪れた依頼人の女性に、健が依頼を失敗した旨を報告する。あの後健も独自の伝で色々な所から探ってみたが、やはり居場所は掴めなかった。
あの絵描きの女性は健には見つけられず、依頼人の女性が残念そうに声を漏らす。
「はぁ……ったく、何みすみす逃してんだか」
「まあまあ、そう怒らないで。福が逃げるよ?」
「ほう、それは面白いことを聞いた。取り敢えず今まで逃げた福を今すぐ利息込みで耳揃えて払ってもらおうか。代金一生文の運命力となりますお客様」
「やめてください事故死してしまいます」
戯けた様子で言う健に何の関心も示した様子もなく、双樹は依頼人の女性に事務的な事項をつらつらと話していく。女性もそれに無難に答えてからソファを立ち、荷物を纏めだす。
「ごめんね、見つけられなくって」
「いいんですよ、元々私のささやかな希望でしたし。見つからなければ見つからなかったで、それは仕方ない事です。有難うございました」
女性はささやかな笑みを浮かべて礼を言うと、事務所から出ていこうとする。双樹が途中まで見送り、女性は川越の街に出た。
――そのままスタスタと、自然な様子で裏路地へと歩いていく。
自然に、無表情のまま、ただただ暗く細い道を歩いていく。少しばかり進
[1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ