第1話「舞えない黒蝶のバレリーナ」
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いように、自然と歩み寄っていく。ある程度まで近付いた所で向こうも気づいたのか、少しばかり警戒するような視線を二人へと向けた。パタンとスケッチブックを閉じ、胸に抱き抱え立ち上がった。
まあ、この状況であればナンパとでも疑られても仕方はない。まずはその誤解を解かねばならないだろう。
「突然すいません。今の、異能力ですよね?少し聞きたい事が……」
「またですか……!」
唐突にそう呟いた女性はすぐさま走り出し、二人が呆然としている内にみるみる遠ざかっていく。なんとか我に返って健が呼び止めようとするも、女性は全く聞こうとしない。
「あっ、ちょっとー!追った方が良さげー!?」
「そりゃそうでしょ……『また』って事は、大体予想つきますしね……!」
慌てて飛び出して、人混みの中に消えて行く女性を追う。その複雑な人の海を掻き分けつつ、後ろ姿を視界から外さぬよう走り続けていく。どうやら大きめのスケッチブックを持っているせいか、上手く進む事が出来ないらしい。焦った様子で彼女が飛び込んでいったのは、行き止まりになっている裏路地だ。
言い方は悪いが、これで追い詰めた事になる。
最奥へと走り、そのビルの壁を見上げる女性に、今度こそ話をする。きちんと説得せねば、彼女はいずれ必ず不幸な目に遭う。というか、あの様子からするに、既にもう不幸な目に『遭った後』なのだろう。
であればこそ、そこからの脱却の仕方を知らない今の彼女には、国の保護が必要だ。
息を切らせつつも、眼鏡越しにこちらをキッと睨み付けた女性は、忌々しげに呟く。
「……はっ……はっ……っ、しつこい、です……」
「ふぅ……残念ながら、それは達也に言ってね。全く……彼は本当に女の子に」
「ちょっと黙ってて」
「あっはい」
巫山戯てみせる健を少し睨んで止め、気を取り直して相対する。今の誤解が続いても厄介だし、このままでは彼女の身の危険にも関わるのだ。彼女には悪いが、あまり話している余裕はない。
少しだけ息を整えて、改めて彼女に話し掛ける。
「危害を加えるつもりはありません、驚かせてしまったなら謝ります。ですが、今はどうか同行してくれませんか?貴女の身の危険にも関わる事です」
「……嘘。どうせ、私の能力狙いなんでしょう?」
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「能力狙い?」
「分ってるでしょ、健さん」
首を傾げる健に達也が呆れつつツッコミを入れるが、健はまたも首を傾げる。今はそんな問答をしている暇もない。先に話を通さなければならないのだ。
と、内心で抱く焦りすら知らぬとばかりに、女性がスケッチブックを開く。それはまるでおとぎ話に出てくる魔法書の様にパラパラと捲れ、大きな鳥が描かれたページへと変
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