第1話「舞えない黒蝶のバレリーナ」
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「ナイスだ双樹君っ!君は神か!?」
嬉しそうに依頼書を読み込む健の姿を見て全てを察した達也は、来たる『ときめく依頼』に対する覚悟を、固めているしかなかった。
◇ ◇ ◇
「『不思議な絵描きさん』……ね」
「絵に描いたものを実体化させる……面白い異能だねぇ」
双樹 兵児が持ってきた依頼――女性の依頼内容は、『子がお世話になった不思議な絵描きを探して欲しい』、と言うものだった。一先ずはそう飛び抜けた依頼でないと達也が安心したのも束の間、その『不思議な絵描き』がどうにも異能力者である事が判明する。
現代に於ける異能者――その存在は基本的に、なるべく隠されるようになっている。そもそもの数が少ない上、他の人々との明確な差が生まれる為、人間社会に馴染めない者が殆どであるからだ。人間というものは面倒なもので、自分達と違う存在は無意識下に排除しようとする。故に異能者達の道はおおよそ三つに絞られるのだ。
その力を隠して細々と暮らすか、公に国の機関に就き、異能者としての力を生活に役立てるか、或いは――
――異能集団マフィアの一員となり、裏社会を暗躍する超常者となるか。
この依頼はその絵描きへと礼を言いたい、というのが本筋ではあるが、また別種の目的も存在する。これは全く以来とは関係のない話だが、今は迅速にその『絵描き』を見つけ出す事が先決だろう。
「んで、時に達也君よ。どういった方針で?」
「ふむ、俺の異能で……見つけられたら良いんだけど、面倒な事に30秒しか持たないからなぁ……」
ボヤくように達也が言い、袖をめくって腕時計の時刻を確認する。短針は既に六の数字を超えており、空は既に赤らみ始めている。早い所捜査は終わらせた方が、スムーズに進行するだろう。
一先ずは探偵らしく聞き込みかと、一先ずは人溢れる大通りの周辺を見回してみる。
……と。
「……ねぇ達也、あれ」
「……うん、まあ、モロ……だよな」
二人の視線の先、大通りからは逸れた小さな裏路地の暗闇の中で、座り込み、スケッチブックに何やら描き込んでいる女性が見えた。
暫く待てばそのスケッチブックからは鯨の尾のようなモノが伸び、まるでスケッチブックが水面であるかのように、尾ひれで水飛沫を弾き出す。それは彼女が凭れ掛かるマンションの壁を黒く染めて、重力に従い流れ落ちていった。
当然ながらこの2020年現在、水飛沫を発生させるスケッチブックなどある筈もない。ましてやスケッチブックから鯨の尾が出て来るわけもない。そもそもあんなミニサイズの鯨は居ない。
つまりは、早速の大当たりな訳で。
「目標確認……だなぁ、意外と早かったね」
一応は警戒させな
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