暁 〜小説投稿サイト〜
フロンティアを駆け抜けて
謙虚な厳しさ、傲慢な優しさ
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ップ』で直接腕の骨を折ったりすればたぶん痛くて何もできなかったと思うし、、ラフレシアの花粉ももっと強い毒を使おうと思えば使えたんじゃないかって。……違うかしら?」

 ジェムの声は以前の何の根拠もない盲信とは違う、自分が間違っていることを考えたものだった。何があったか知らないが、随分な変わりようだと思う。それでもアルカは、呆れたように言った。

「何も変わってないですね。やっぱりあなたは、わたしの気持ちなんてわかってないのです。……そんな簡単に、骨を折るなんて言葉が使えるんですから」

 どうせジェムには骨折した経験などないのだろう。あっけらかんと言う態度には実感がこもっていない。けどそれ以上反論の余地はなかった。友達になれないと決めつけることは友達のいないアルカにはわからない。ジェムが自分への償いとしてそれを望むのなら、傷つけた側であるアルカに拒否権がないのもある種当然の話だ。ジェムの傲慢な優しさを、受け入れるしかない。アルカはジェムが自分に対して知ったふうな口を利いて、自分勝手な理想論を押し付けるのではないかと警戒していたからこそ必死に反発しようとしていた。けどそれは独り相撲だったのだ。ジェムはアルカとは全く違う人生を歩んできたことを理解し、違う人間だと分かったうえで共に友であることを望んだのだから。

「そうね、わかってないわ。だからこれからいっぱい時間をかけて……わかりあって生きましょう。お互いにね」

 ジェムはアルカからそっと離れて、立ちあがる。どれくらい気を失っていたのかはわからないが、状況は徐々に差し迫っているはずだ。体を横たえ、鉛のように動かない体で、アルカは小さく笑みを浮かべた。

「……アマノを、止めてあげてください。あの人は、こんな大きなことが出来る人じゃないんです。色々都合のいい偶然が積み重なってここまで来ただけ。だからあなたの手で……あの人の幻想を打ち砕いてあげてください」
「うん、でも私一人じゃなくて……仲間たちみんなの手で、止めてみせるわ。勿論アルカさん、あなたの言葉も使ってね」
「……勝手にすればいいのです」

 この計画は、アルカがジェムやダイバを毒で捕まえることが前提だ。今アマノがヴァーチャルシステムを乗っ取りに成功していたところで、じきにチャンピオンやオーナーの用意したセキリュティが止めにくる。その時に人質として二人を使うはずだったが、それは叶わない以上時間の問題だ。事が大きくなる前に、幼い子供程度に計画を止められた哀れな男として終わらせてほしいと願う。だがこの胸中もジェムは理解していないのだろう。まだ眠っているダイバをラティアスの背に乗せ、自分も背中に乗った後もう一度アルカを見た。

「それじゃあ行ってくるわね。終わったら、一緒に塔を降りましょう」
「わかり
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