謙虚な厳しさ、傲慢な優しさ
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ルや毒ガス入りの小さなスプレーなどが置かれていた。アルカの持っていた危険物は全て奪われたようだった。普通の人間が相手ならむしろそれくらいの警戒は当然としか思わなかっただろう。しかしジェムはこの前アルカを助けるために自分が毒に支配されることさえ厭わなかった。それでアルカが救われると本気で信じていたはずだ。仕方なく、アルカはため息をついた。
「これじゃ何も出来ませんね。降参です」
「……嘘吐きね。ダイバ君の時みたいに、何とかして騙そうって考えてるでしょ?あのね、アルカさんの夢……私も見ちゃったの。あなたがどんな風に生きてきたのか、少しだけわかっちゃった」
「……ッ!」
悲しそうにため息をついた後、ジェムは断言した。彼女の言う通り、アルカは諦めたふりをして、上に行ったときアマノに有利になるように嘘の情報をばら撒くか、同情を引く言葉で先に行かせないようにするつもりだった。それはあっさりと看破され、醜い過去を覗き見られ。表情が憎々しげに歪む。
「じゃあなんであなたはわたしを抱きしめてるんですか? 嘘吐きで、平気で他人を毒で苦しめ殺す女を、あなたみたいな人がどうして心配するっていうのです!? あなたの善意なんて不愉快なだけです、離れてください!!」
「……いやよ。私が心配する理由は、私があなたを心配したいから。ただそれだけ。私がチャンピオンの娘だとか、あなたがどんな思いで生きてきたかは、関係ないわ」
強い言葉をぶつけても、ジェムは苦しそうな顔をするものの怯まなかった。無理やり離れようかとも思ったが、鋼の拳に打ち据えられ、爆発に巻き込まれたダメージは大きく動けず。アルカはこの前とは打って変わった態度を取るジェムに困惑を隠せない。
「迷惑だって言われるとしても、あなたに謝りたかったの。……あの時は、私が間違ってた。私は……自分の力であなたを助けられるって思い上がってた。一人じゃ自分の事も守れないし、お父様やお母様の事を何も知らなかったのに……皆誰かに愛されてるはず、悪いことなんてしたくないはずって決めつけてた。だから、本当にごめんなさい」
ジェムはアルカの瞳を見つめる。くすんだ自分の赤目とは違う宝石のような赤と青のオッドアイは今も綺麗に輝いていた。その後ジェムは頭を下げる。アルカから見ればその姿は隙だらけだ。毒の注射器が奪われていなければこの隙に死力を振り絞ってでも刺し殺してやるのに、と思う。
「謝られたところで、何の慰めにもなりませんよ。多少考えを改めようが、あなたの自己満足であることに変わりないのです!」
「……そうね」
顔を上げたジェムはアルカに対して手を伸ばす。あの時はその手をアルカが叩いた。そして今度は。ジェムが、アルカの頬を叩いた。突然の事にアルカの思考が止まって、茫然
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