謙虚な厳しさ、傲慢な優しさ
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ように、しかし今度こそ自分のポケモン達とともに眠ってしまおうかと思う。しかし、もう夢は覚めたはずなのに雫がアルカの頬にぽたりぽたりと落ちる。もう泣く理由などないはずなのに。瞼を閉じたまま体の意識を外に向けると、動かせない体を誰かがぎゅっと抱きしめているのがわかる。そのぬくもりはアルカに名前も声も知らない誰かを思い起こさせた。
「お母さん……?」
「良かった……! 生きてて、くれたのね……!」
ひどく真剣な女の声だった。アルカはその言葉が向けられているとわかった。ただ体を抱きしめて声をかける女の事を思い出し、ぼんやりと声をかける。
「……どういうつもりでそうしているのかは知りませんが、痛いですよ。本当に人の気持ちを考えない子供ですね」
瞳を開ける。幼い少女が、自分に対して泣いていた。彼女はチャンピオンの娘。両親に愛されて育ち、食べる物にも住む場所にも何不自由なく育った自分とは対極の存在。相手がどういう人生を歩んで来たかなど知ろうともしないくせに性善説を押し付ける、迷惑だけど優しい子供。
「あっ、ごめんなさい……ラティが火傷は治してくれたけど、すごくつらそうな顔してたから心配で……」
自分を抱きしめる腕を離し、そっと床に降ろす。その所作は傷ついた自分に対してできるだけ気遣おうとしているのがわかる。
「……で? 私に何か聞きたいことでも?」
「うん……聞きたいことは色々あるし、言いたいこともあるわ」
しかしアルカは冷たく、敵意を緩めずに返す。向こうが性懲りもなく同情しようというのなら、その隙を突くまで。バトルタワーのシステムによりもうポケモンを出すことは出来ないが、まだ撒ける毒はある。アルカはそっと腕を襤褸切れの下、腰につけている小さな注射器を手に取ろうとした。その中にはこのフロンティアに来る前にトウカシティでばら撒いてきたのと同じ、吸い込んだとたんに激しい頭痛や吐き気に襲われる毒が入っている。傍に控えるラティアスが『神秘の守り』を使っているようだがこれは注射器で直接血管に打ち込めばもだえ苦しませることが出来るはずだ。
(……ない? 爆発の衝撃で吹き飛んでしまいましたか)
だが、服の下に隠しているはずのそれはなくなっていた。メタグロスの『大爆発』によって壁まで吹き飛ばされたのだからその時に無くしても不自然ではない。しかし、そうではなかった。ジェムが彼女の後ろに置いておいたアルカの注射器を見せてくる。そのことに少なからず驚きを隠せないアルカ。
「な……どうして、あなたが?」
「気を失ってる間に、アルカさんが持ってる危なそうなものは一旦取っておいたの。アルカさんは……本気で私を止めようとしてるから」
ジェムの後ろに目をやると、他にもモンスターボー
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