謙虚な厳しさ、傲慢な優しさ
[4/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
のか、少しばかり言葉に詰まったようだった。
「……やはり特別な人間は私とは違うということか。まあいいだろう。私の名前はアマノ・サグメ。そして計画とは――」
今完成間近のバトルフロンティアというポケモンバトルを利用した娯楽施設。それをアマノという男は破壊したいらしい。理由は口にしなかったがその意志は強く、また自分一人では無謀であることを理解した上でアルカや、そこに訪れるであろう特別な人間を利用するつもりの様だった。アマノは人前では穏やかな優しい男を気取るものの。ふとした弾みに汚い言葉が漏れたり計画もかなり運頼みなところがあったりしてアルカから見ても不安になるような人間だった。自分も計画の駒として使う以上必要なことは厳しく教えられたし、時折催眠術で人を思いのままに支配して喜んでいるのも、最初に自分を拾った老人を思い起こさせて好きにはなれなかった。催眠術による支配の効果がなければ、とっくに殺して飛び出していたかもしれない。でも一緒に過ごしていて、ふとした疑問が浮かび聞いたのだ。
「アマノは……どうして、私の心を支配しないのです?」
アマノのカラマネロが使える催眠術には二種類ある。一つはアルカにかけている命令に従わせるだけの術。もう一つは心を支配して相手が自発的に服従するようになる術だ。アルカの危険性を知っているのなら、完全にアマノの事を好きになるように術をかけておいた方がいいはずだ。なのにアマノはそれをしない。アルカが毒を吐いたり皮肉を言うのに文句を言いながらも、心は自由にさせている。それに対し、アマノは答える。
「――他――――――――――――――――お前―――――――」
言葉は、ここで薄れて聞こえなくなっていく。答えは聞こえなかったのに、アルカは自分の瞳から涙を流していた。ぽたりぽたりと、雫が頬に落ちていく。これは自分の記憶。物心ついてから自分がどんな人生を過ごしたのかが走馬灯。死んだのかとも思ったが、無情にも意識は覚醒していく。
(ああ……夢でしたか。思い返しても、気分のよくないものですね)
アルカの意識が現実に戻る。アマノの計画に加担し、邪魔をしに来るチャンピオンの娘とフロンティアのオーナーの息子を毒で侵すため待ち構えた。自分が生来貰っている毒草を操る技術にアマノに教えられた毒ポケモンを使った戦術は確かに二人を追い詰めたが、メタグロスの大爆発の前に吹き飛ばされたのだ。体の芯にダメージが残り、瞼を開くのも億劫だった。
(アマノ……やっぱりあなたは愚かですよ。わたしなんかを、計画の駒にするなんて)
アマノの催眠術により裏切ることはなかった。けれどもやはり自分が生き残れればそれでいいだけの醜い女に巨大施設の破壊計画なんて相応しくなかったのだ。夢と同じ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ