謙虚な厳しさ、傲慢な優しさ
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「……わたしのこと、知ってるのです?」
自分で助けておいてこの警戒の仕方は不自然だ。素直に疑問を口にする。
「むしろ、お前はお前自身の事をどれだけ知っている? さっき父親について口にしていたが、お前は自分の父親が何者か知っているのか?」
「知りません。何も。あなたは?」
アルカには両親の記憶は一切ない。その言葉に嘘はないと判断したのか、目の前の男は少し考えた後、口を開いた。
「直接会ったことはないが、どういう人物かは知っている。……ただし交換条件だ。このことを話す代わりに、お前には私の計画に協力してもらう」
「わかりました」
アルカは考えることなく答えた。基本的に自分を拾った相手に逆らうことなどしないからだ。それをするときは、殺してしまう時だけ。むしろ男の方が息を呑む。
「いいだろう。お前の父親は……世界各地の悪の組織に協力するフリーの傭兵だ。極めて強大な毒虫達を自在に操り、組織に仇名すものを殺し尽くしたという。自ら毒を振りまき、不快なさざめきをまき散らす危険極まる男だったそうだ」
「悪の組織……だった」
自分の父親が悪人だったらしいことに特別恐怖感や忌避感はなかった。自分ももう何人殺したかわからないし、その時も悲しかっただけだ。悪いことだ、と思える教育は受けていない。
「その男は20年以上前にとある悪の総統と戦って死んだとも言われているが……実は生き延びていて、悪の組織の女と子供を作ったという噂があった。そしてそれがお前だと、私は思っている。お前の連れている虫を食らう花たちとお前の人生がその根拠だ」
「この子たちが……」
自分のまとう襤褸切れの中に隠しているボールの中の毒草たちを見る。男の手によって回復させられたのか、元気を取り戻していた。本来草タイプが苦手なはずの虫ポケモンを食らい尽すこの子たちが、自分が寄り付くものをすべて殺してしまう性質が父親を繋げているといるのかもしれないという。
「お前が親の顔を知らず、私はそれ以降あの男が動いているという話は聞いたことはない。恐らくは、もう母親ともども生きてはいないのだろう。……私が知っているのはここまでだ」
「そうなのですか。ありがとうございます」
アルカはぺこりとお辞儀をする。両親の素性にも恐らくは既に生きていないであろうことにも特別な感慨はなかった。ただなんとなく、自分がどうして今まであんなことをしてきたのかの理由がわかって安心していた。
「それで、わたしは何をすればいいですか?」
淡泊に、アルカは尋ねる。男は自分の計画に協力しろと言った。アルカの力とそうした素性を知ったうえで何が目的なのか、どちらかと言えばそちらに興味があった。男はあっさりと受け止めたアルカに驚いた
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