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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二十五話 将官会議
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そしてヴァレンシュタインは明らかに楽しんでいた。
「楽なのですよ、貴官がいると。自分のミスを他人に押し付けてくれるのですから」
「……」
「悪いのは総司令部じゃない、悪いのは敵を打ち破れない味方です。迷子になったのは味方がきちんと連絡を入れないからです。それに戦場があまりにも混乱していました……」
「……」
先程まで真っ赤になっていたロボスの表情は今は蒼白になっている。体が小刻みに震えているのが俺の席からも分かった。フォークは落ち着きなくキョトキョトしている。ロボスの思惑が気になるのだろう。
「今度の作戦もそうでしょう。陸戦隊をイゼルローン要塞に送り込む。要塞を占拠できなかったのは陸戦隊が不甲斐ないからで総司令部の責任ではない、総司令部は最善を尽くした。違いますか?」
「そ、そんな事は」
「そんな事はありませんか? 作戦は必ず成功すると?」
「も、もちろんです。必ず要塞は占拠できます」
馬鹿が、挑発に乗ってどうする。隣でヤンが溜息を吐くのが聞こえた。
「ならば陸戦隊を自ら率いてはどうです」
「!」
「必ず成功するのでしょう。武勲第一位ですね」
フォークの表情が引き攣った。顔面は蒼白になっている。そしてもうロボスを見る余裕もない。
「できもしないことを言わないでください」
「不可能事を言い立てるのは貴官の方でしょう。しかも安全な場所から動かずにね、恥知らずが」
「小官を侮辱するのですか」
「大言壮語を聞くのに飽きただけです。貴官は自己の才能を示すのに他者を貶めるのではなく実績を持ってすべきでしょう。他人に命じることが自分にできるのか、やってみてはどうかと言っています」
「……」
「陸戦隊を指揮しなさい、オフレッサーなどただの野蛮人、リューネブルクはこずるい裏切り者。そうでしょう、フォーク中佐」
突然、フォークが悲鳴を上げ蹲った。会議室の人間は皆顔を見合わせている。
「フォーク中佐、どうした」
ロボス元帥の声にもフォークは答えない。ただ“ヒーッ”という悲鳴が聞こえるだけだ。ようやく会議室にざわめきが起きた。
「誰か軍医を呼んでください」
ヴァレンシュタインの声に末席にいた参謀が慌ててTV電話で軍医を呼び始めた。
「ヴァレンシュタイン、貴官、一体」
「落ち着いてください、元帥。今軍医が来ます。我々が騒いでも何の役にも立ちません」
激高するロボス元帥をヴァレンシュタインは冷酷と言っていい口調で黙らせた。フォークの異常な様子にもヴァレンシュタインは全く驚いていない。平然としている。その姿に会議室のざわめきが収まった。誰もが皆顔を引き攣らせている。
軍医が来たのは五分ほどたってからだった。診断は転換性ヒステリーによる神経性盲目。我儘一杯に育った幼児に時としてみら
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