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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二十五話 将官会議
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「そうかもしれません。しかし作戦を実施する以上、万一敵が艦隊を配置した場合の事を考慮するのは当然の事でしょう。答えてください」
「……その場合は高度な柔軟性を維持しつつ臨機応変に対処することになります」
高度な柔軟性? 臨機応変? なんだそれは? 行き当たりばったりということか? 嘘でもいいからもう少しまともな答えを出せ。
「それは作戦の実施を見合わせる事も有り得るという事ですか、フォーク中佐?」
どこか笑いを含んだヴァレンシュタインの言葉にフォークの唇が歪んだ。ロボス元帥も渋い表情をしている。
「……そうでは有りません。何らかの手段を講じて作戦を実施するという事です」
「何らかの手段とは?」
「それは……」
フォークの唇がさらに歪んだ。馬鹿が、一時しのぎで答えるから突っ込まれるのだ。
「その辺にしておけ、ヴァレンシュタイン大佐。それ以上は戦闘になってみなければわかるまい」
ロボス元帥が不機嫌そうな声で助け船を出した。フォークの顔が屈辱でさらに歪む、助かったという思いより面子を潰されたと思ったのかもしれない。第一ラウンドはヴァレンシュタインの勝利だな。それにしても戦闘になってみなければわからない? 総司令官の言葉とは思えんな……。
周囲は皆無言だ。私語ひとつ聞こえない。第七艦隊司令官ホーウッド中将、第八艦隊司令官アップルトン中将、第九艦隊司令官アル・サレム中将も沈黙を保っている。話に加わっても碌なことにはならないと考えているのだろう。賢明な判断だ。
「ではもう一つ答えていただきたいことがあります」
ヴァレンシュタインの言葉にロボスとフォークが露骨に嫌な顔をした。質問は打ち切ったつもりだったのかもしれない。残念だが第二ラウンドの開始だ。ヴァレンシュタインがゴングを鳴らした。
「陸戦隊を送り込んだ場合ですが敵の防戦により要塞の占拠が不可能と判断された場合、陸戦隊の撤退はどのように行われるのかをお聞きしたい。要塞占拠に手間取れば艦隊戦闘は混戦になっている可能性がある。撤退する味方をどう援護するのか……」
意地の悪い質問だが至極当然の質問でもある。今回の作戦はおそらく要塞内に陸戦隊を送り込むことは可能だ。だが要塞を占拠できるかと言われれば難しいと言わざるを得ない。その場合送り込んだ陸戦隊をどう撤退させるか、ヤンとも話したがお手上げだった。艦隊戦闘がどうなっているか分からない、不確定要素が多すぎるのだ。最悪の場合見殺しというのもあり得るだろう。
「なぜ失敗する危険性のみを強調するのです。ミサイル攻撃が成功すれば敵は混乱して効果的な防御などできるはずがありません。取るに足りぬ杞憂です」
自信満々でフォークが断言した。隣のヤンが呆れた様な表情をしている。えらいもんだ、よくそこまで楽観論が展開できるな。
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