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風魔の小次郎 風魔血風録
139部分:第十二話 聖剣の真実その十三
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第十二話 聖剣の真実その十三

「私にも魔矢がいます。だから」
 ここで夜叉姫は己の右後ろに控える美しい女を横目で一瞥した。
「お互い様です。これでいいでしょう」
「そうか。その言葉感謝する」
「北条姫子」
 夜叉姫は今度は姫子を見てその名を呼ぶのであった。
「噂は聞いていました。しかし会うのはこれがはじめてですね」
「それはこちらもです」
 姫子もまた夜叉姫を見返して答える。
「夜叉姫。貴女が」
「これが最後の闘いになります」
 今度はこう姫子に告げたのであった。
「私達が立ち会う次の闘いが」
「止められるつもりはないのですね」 
 顔を上げて夜叉姫に問う姫子であった。小柄な筈の夜叉姫だが何故かその背丈よりも大きく見えた。だからであった。
「もう。この闘いも」
「貴女も北条家の者ならばわかっている筈」
 夜叉姫の言葉は鋭かった。
「風魔と夜叉の因縁のことは」
「それはそうですが」
「そして北条家と上杉家のことを」
 両家のことにまで話が及ぶ。
「我等は戦国より争ってきた間柄ではありませんか。それでどうして止められましょう」
「それではやはり」
「これで最後です」
 このことは夜叉姫もわかってはいた。
「最後の闘いとします」
「最後、ですか」
「これで全ては決します」
 夜叉姫はこうも言った。
「だからこそ。いざ」
「・・・・・・わかりました」
 これ以上の話は無理であった。姫子もまた頷くしかなかった。こうして二人は夜叉姫の部屋に向かうことになった。それぞれの友を連れて。
 小次郎と武蔵もまたであった。彼等も誠士館の奥へ進もうとする。まずは武蔵の前に八将軍達が現われたのであった。
「御前等、何だ」
「別に何もないがな」
 陽炎が視線を上にやりつつ武蔵に応えた。
「だが。一つ言っておこう」
「何だ?」
「精々死なないことだ」
 こう武蔵に告げるのであった。
「御前は好かぬがそれでも死んでもらってはこちらとしても後味が悪い」
「その黄金剣は御前にやる」
 白虎が言う。
「壬生が託したものだからな」
「それで貴様なりに闘うがいい」
 雷電もいる。
「姫様の前で無様は許されんからな」
「貴様が決戦の人間とは不本意だが」 
 こう述べる妖水の顔は笑っている。
「だが。姫様がお決めになられたことだからな」
「死ぬのはこの黒獅子が許さん」
 黒獅子もまた立っていた。
「死んだその時は盛大な墓を用意してやるがな」
「さて、後は貴様次第だが」
 闇鬼も告げる。
「我等夜叉の黄金剣上手く使うのだ」
「ここで敗れたならば容赦はしない」
 不知火はこうは言っても目が温かい。
「貴様に限ってはないがな」
「では行け」
 最後に告げたのは紫炎であった。

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