第五十話 入試テストその六
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「大丈夫だったけれど」
「それも俺もだよ」
「ちゃんとチェックしたのね」
「ああ、大丈夫だったよ」
名前もずれもというのだ。
「幸いな」
「それは何よりね」
「ああ、出来たよ」
実際にというのだ。
「ちゃんとな」
「それは何よりね」
「それでも合格するかどうかはな」
「わからないわよね」
「合格発表まではな」
実際に合格しているかどうかはというのだ。
「本当にわからないな」
「そういうものよね」
「ああ、それで誰かと会えたか?」
「そうしたことはなかったわ」
「それじゃあ何で機嫌いいんだ?」
「ええ、懐かしくて」
微笑んで言うのだった。
「それでなの」
「懐かしい?」
「八条学園の制服見てたらね」
この学園の制服は一つではない、何十いや百近い種類がある。その中から自分で好きな制服を選べるのだ。
そのうちの幾つかを見てだ、優花は思ったのだ。
「私もああした制服着てたのねってね」
「思ってか」
「懐かしいって思ったの」
「成程な」
「あの頃思い出して」
「そうか、あの頃の御前はな」
男だったとだ、龍馬は行間に入れた。
「そうだったけれどな」
「そうね、そこは違うけれど」
「それでも懐かしさって感じるか」
「実際にそうだったわ」
「そうか、けれど合格してたらな」
「また毎日見られるわね」
「そうなるさ、じゃあ合格までは待つしかないし」
それでというのだった、龍馬は優花にあらためて言った。
「帰るか」
「ええ、やることやったし」
「後は帰ってな」
「休みましょう」
「ああ、御前はすぐあっちに帰るのか?」
二人で歩きはじめつつだ、龍馬は優花にこのことも問うた。
「そうするのか?」
「ええ、明日から学校だし」
「大変だな」
「仕方ないわよ、それは」
「長崎にいたらか」
「やっぱりすぐに帰らないとね」
入試が終わったらというのだ。
「だからそうするわ」
「発表はそっちで待つか」
「そうするわ、じゃあまたね」
「ああ、一緒に合格出来てることを祈ってな」
「そうしてね」
「待っていような」
「そうしましょう、あと龍馬卒業の方は」
「大丈夫だよ」
明るい笑顔での返事だった。
「安心してくれよ」
「そうなのね」
「ああ、追試とか全然受けてないぜ」
少なくとも推薦を取れるだけの成績である、模試の査定でも伊達にAではない。
「大丈夫さ」
「それは何よりね」
「ああ、またそっちに行くからな」
「卒業までの間に」
「合格してたらな」
「待ってるわね」
「そうしてくれよ、長崎でまた楽しもうな」
笑顔のままだった、龍馬は。
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