巻ノ八十五 猿飛大介その十
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「そして御主達もじゃ」
「はい、天下一の忍に」
「なります」
十勇士達も誓って言った。
「必ずや」
「殿と共に」
「そうしようぞ、ではこれからも鍛錬じゃ」
幸村は十勇士達にあらためて言った。
「そして天下一の武士、忍にな」
「なりましょう」
「そしてそのうえで、ですな」
「時が来れば」
「働きましょうぞ」
「そうしようぞ、それと天下のことはな」
こちらのこともだ、幸村は話した。
「わかっておるな」
「はい、これからもです」
「九度山を出まして」
「そしてですな」
「見ていきますか」
「そうせよ、拙者も出るからな」
こう言ってだ、実際にだった。十勇士達だけでなく幸村も天下に出てその動きを見ていった。そして昌幸に言うのだった。
「お拾様と千姫様がです」
「夫婦となられたか」
「千姫様は大坂に入られました」
「左様か」
「これはです」
「うむ、大坂にとってはな」
「大きいですな」
「人質にもなる」
昌幸はあえて言った。
「大坂のな」
「左様ですな」
「右府殿はあえて人質を送られた」
「豊臣家に対して」
「この意味は大きい」
「そしてお拾様はですな」
「右府殿の外孫になられた」
孫の夫だからだ、そうなるのだ。
「かつて右府殿は太閤様の妹婿であられたしな」
「そのこともあり」
「無下にはされぬ」
「その意思表示ですな」
「そうじゃ、しかしな」
その家康の意思表示をだ、昌幸は言った。
「茶々殿がおわかりか」
「それは」
「そうではない、やはりな」
「あの方だけは」
「わかっておられぬ」
そうしたことがというのだ。
「一切な」
「そうした方ですな」
「そうじゃ、政のことは全くおわかりになられぬ」
「それが為に」
「千姫様を大坂に入れられたこともな」
「臣従とですな」
「思われておろう、しかし違う」
昌幸は鋭い目で幸村に話した。
「右府殿は無下にせぬからじゃ」
「徳川家、幕府に臣従し」
「大阪を明け渡してな」
「他の国の国持大名となられよ」
「そう豊臣家に言っておられるのじゃ」
家康の考えをだ、昌幸は九度山にいながら全てわかっていた。江戸から遠く離れている人も少ないこの山においてだ。
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