Side Story
少女怪盗と仮面の神父 43
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度得たものは大切にしておけ。それらは全部お前を拘束する鎖だが、お前が雑に扱ったり裏切ったりしなければ、お前を生かす力にもなってくれる。ま、立ち位置が変わったくらいで切れる関係なら、いっそスッパリ絶ち切った方がお互いに後々の気分は良いかもな」
彼は森に向かって転身し、右手を軽く振り上げた。
ほぼ同時に、暗闇の中から小柄な人影が現れる。
「マーシャルを運んでやれ。後はアーレストに話を合わせれば良い」
「はーい。了解でーっす!」
すたたたーっと走ってきた金髪碧眼の騎士は、王子の手前で片膝を突き、指示を受けて立ち上がり、すたたたーっとマーシャルの傍らへ駆け寄ると、治療中の彼女を、自身のマントでぐるぐる巻きにしてひょいっと抱え上げ、再び王子の手前まで、小走りで素早く戻った。
問答無用で患者を持ち去られたクナートは驚いて一瞬口を開きかけたが、王子の部下が相手だからか、何も言わずに治療道具の片付けを始める。
元ブルーローズの現軍属騎士達も。
王子と森との間に陣を敷き直し、無言で各々の武器を構えた。
(え? なんで武器……そうか。イオーネにばっかり気を取られてたけど、暗殺者はまだ大勢いるんだ)
イオーネと初めて対面した時ですら、近くに二十人近く居たらしいし。
暗殺者達が共有する情報を、バーデルに流されないようにしなければ……
「さて。他に尋きたいことは無いな? あったとしても後日にしろ。今からここは本格的な戦場になる。お前が見ても愉快な場面じゃないし、戦闘中に殺すな、怪我をするなときゃんきゃん喚かれても大迷惑だ。よって、非力な女子供は、ただちに『寝ろ』」
「は? ……へ?」
顔で振り向いた王子の唐突な無茶振りに目を瞬かせると。
景色が突然、くるりと一回転。
前触れなく凶悪な眠気に襲われ、両膝が力無く崩れ落ちた。
「な……、なん、……?」
桃を使った暗示は解けている。
誰かに何かをされたわけでもない。
意図的にミートリッテを眠らせる方法なんてない筈なのに、たった一言『寝ろ』と告げられただけで、頭の奥がぼんやりと滲んで薄れていく。
まさか、匂いの他にも何かがあるのか?
ありえない……。
人の頭にいくつ仕掛けてるんだ、この人でなし王子!
「うん? あー……私は特に何もしてないから安心しろ。アーレスト曰く、真に心地好い旋律ってヤツは、耳で認識できなくても人間の脳を深い眠りへ誘えるらしい。理窟を聴いてもサッパリ解らんかったが……道具も使わずに意識を操れるとか、音楽ってのは意外と万能だな。誰にでもできるようになったら、世界中で洗脳合戦が起きそうだ。怖い怖い」
(おん、がく? って、これ アーレスト、しんぷ の しわざ、かっ!)
人間には絶
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