Side Story
少女怪盗と仮面の神父 43
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いでしょう。或いは、何処かで「賭け」の話を盗み聞きするだろうイオーネさん達を確実に釣る為に、殿下がわざと誤解させていたのかも知れませんが」
状況やミートリッテさんの選択次第では、どちらの称号もミートリッテさんが継いでましたから。先程までの流れなら「領主の後継者」になる可能性も高く、強ち間違いではありませんでしたし、訂正する必要を感じなかったので、私も敢えて口は挿みませんでした。
と、さりげなく付け足された情報で、ハウィスの両肩が目に見えて落ち込む。
離して良いのか迷うアルフィンの、おどおどした表情が愛らしい。
「……そういえば、神父様が最初に承認したのは「伯爵の後継者」だったけど、イオーネは私を「領主の後継者」とも言ってたし、ハウィス達も賭けの真意については知らされてなかったっぽいよね。予め教わってたらこんなに苦しまなかっただろうし……これも罰の一環なんですか? お父様……って、呼んで良いのかな、今」
なんとなく、もやもや気分で王子へ振り返ると
「さぁ? とりあえず、技術でも金でも立場でも人の縁でも、一度得たものは大切にしておけ。それらは全部お前を縛る鎖だが、お前が雑に扱ったり裏切ったりしなければ、お前を生かす力にもなってくれる。ま、立ち位置が変わったくらいで切れる関係なら、いっそスッパリ絶ち切った方がお互いに後々の気分は良いかもな」
彼は森に向かって転身し、右手を軽く振り上げた。ほぼ同時に、暗闇の中から小柄な人影が現れる。
「マーシャルを運んでやれ。後はアーレストに話を合わせれば良い」
「はーい。了解でーっす!」
すたたたたーっと走って来た金髪碧眼の騎士は、王子の手前で一旦片膝を突き、指示を受けてすたたたたーっとマーシャルの傍らへ駆け寄ると、治療中の彼女を自身のマントでぐるぐる巻きにしてひょいっと抱え上げ、再び王子の手前まで小走りで素早く戻った。
問答無用でいきなり患者を持ち去られたクナートは驚き顔で一瞬口を開きかけたが、王子の部下が相手だからか、何も言わずに治療道具の片付けを始めた。元ブルーローズの現軍属騎士達も王子と森との間に陣を敷き直し、無言で各々の武器を構える。
(……え? なんで武器……あ、そうか。イオーネにばっかり気を取られてたけど、暗殺者はまだ大勢いるんだ。バーデル軍との接触を妨害しなきゃ、アルスエルナの情報が……)
「さて。他に尋きたい事は無いな? あったとしても後にしろ。今から此処は本格的な戦場になる。見ていて愉快な場面じゃないし、戦闘中に殺すな怪我をするなときゃんきゃん喚かれても大迷惑だ。よって、非力な女子供は直ちに「寝ろ」」
「は? ……へ?」
顔で振り向いた王子の唐突な無茶振りに目を瞬かせると、景色が突然、くるりと一回転。前触れなく凶悪な眠気に襲われ、両膝が力無く崩れ落ちた
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