Side Story
少女怪盗と仮面の神父 43
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で一時的に権力を失った、とかじゃなくて、そもそも貴族の生まれじゃなかった……? 貴族じゃないどころか身分証明が無いって、それは!」
「そう。ブルーローズの構成員は全員、終戦後にハウィスさんの下へ集った戦災孤児だったんです。それを知った殿下は、当時彼が継承したばかりのリアメルティ領へとブルーローズを丸ごと隠し、女性二人の保護と引き換えに、男性構成員を「バーデル在住・西大陸方面の偵察部隊」として雇いました。ハウィスさんとマーシャルさんが喧嘩別れしたのは、マーシャルさんが偵察部隊に付いて行くと言って聞かなかったからだそうです」
「戦災……孤児……」
王子は、手札を回収して匿っていたのではなく、身寄りが無い犯罪者達を匿い、手札にしていた。
あまりの衝撃に言葉を失い、ただただ茫然とハウィスへ目を向ける。
彼女はアルフィンがしがみ付いたままの腕を中途半端に下ろし、唇を真一文字に引き結んで俯いていた。
その肩が少しだけ、震えてる。
「ハウィス……」
いろんな居住地を一緒に見て回った。一人で『観光』へ行きたいと我が儘を言い出した時も、ミートリッテ専用の特別身分証明を「失くさないでね」と笑いながら手渡ししてくれて。
(……あの身分証明は、ハウィスが身も心も削って用意してくれてたんだ。それを私は、ハウィスの傷を抉る為に使ってた。私は……何処まで……!!)
自分に対する怒りと悔しさで目頭が熱くなり、思わず唇に歯を立てた瞬間。
「思う所は多々あるでしょう。しかし、この話で重要なのは「戦災孤児のハウィスさんが」七年もの間軍属騎士を務めた結果、「殿下から」リアメルティ領を継承した事実です。貴女が如何に短慮であったか、ではありません」
「っ!」
妙に落ち着いたアーレストの声が、ミートリッテの頭に冷静な思考を呼び戻した。
「……はい」
今は、自分が何の為に、何をしなければいけないのかを考える時。反省するなら一連の問題に片を付けた後だ。
「大丈夫です。続きを聞かせてください」
右手に持った短剣の柄を強く握り直し、再びアーレストを正面に見据えて頷く。
音も無く目蓋に隠れた金色の眼差しが、月の光を纏ってゆっくりと現れる。
「先々代のリアメルティ領主、先代のエルーラン殿下、当代のハウィスさんの間に、血の繋がりはありません。親戚の親戚だったり、何処かの貴族の落とし胤だったりでもない。にも拘らず、彼らがリアメルティ領を引き継げたのは、アルスエルナ王国の爵位制度が理由です」
「爵位制度?」
「アルスエルナ王国の爵位は、一定期間以上国軍に在籍して相応の手柄を立てた個人、生活・文化面で特筆すべき功績を残した個人、アルスエルナ王国が統治する領土そのものに与えられています。そして、人に与えられた爵位は当主の近親者へ。爵位付きの各
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